寄生植物

2024年4月12日 (金)

ケヤマウツボ

高度1,000m以上の山野を歩く機会は、調査依頼を受けた時くらいとなってしまいました。昨日は、ある目的があって久々に行ってきました。

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ケヤマウツボが姿を現していました。落葉広葉樹林に生育する寄生植物です。宿主はブナ科やカバノキ科などの樹木の根とあります。

この植物は野生動物に好まれるようで、生育地が荒らされアルマジロのような地下茎が露出していることがあります。

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総状に付く沢山の花の先端には、細長い花柱が姿を現しています。

ハマウツボ科ヤマウツボ属ケヤマウツボ(Lathraea japonica Miq. var. miqueliana (Franch. et Sav.) Ohwi)。地上部に軟毛のないものが母種のヤマウツボですが、静岡県内では稀とあります。以前Ylistでは区別しないとなっていたような記憶もありますが、現在は変種としてケヤマウツボの学名が記載されています。

熟して放出(散布)される時期に、この植物の種子を観察したいと思っていますが、タイミングが合わずまだ実行できておりません。亜高山帯のミヤマハンノキの根に寄生するオニクもそうですが、地表に散布された種子がどのような過程を辿り宿主の根に到達するのか興味があります。特に後者は、周辺に沢山のミヤマハンノキがある場所でも、限られた木の根にだけ寄生しているような印象を持っています。

2023年10月29日 (日)

コシオガマ

先日、林業業者さんに保護してもらったある植物の様子を見に行きました。

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草が繁茂した木材搬出道を歩くと、キバナノアキギリの残り花が見られました。ここのキバナノアキギリは、他所に比べて大きめです。

すると、その隣に・・。

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あれっ、ピンクのキバナノアキギリ?遠目に見ると似た形態の花なので、一瞬そう思ってしまいました。

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近づいてみると、葉や花の形態が違います。コシオガマのようです。

ハマウツボ科コシオガマ属コシオガマ(Phtheirospermum japonicum (Thunb.) Kanitz)。旧分類体系では、ゴマノハグサ科とされています。


コシオガマは、半寄生植物の一年草です。来年もこの場所で見られるのでしょうか?調べてみると、宿主なしでも発芽・生存可能だそうですから、無事種子が散布されれば再会できる可能性が高いようです。

コシオガマについて調べていたら、寄生植物がどのようにして宿主の存在を認識できるのか、そのシステムに関する論文が幾つか見つかりました。以前から気になっているのは、亜高山帯のミヤマハンノキの根に寄生するオニクの事です。オニクは、一ヶ所で複数の個体が見られます。でも、沢山のミヤマハンノキがあるのに、限られた木の周辺でしか見る事が出来ません。同じミヤマハンノキでも、オニクに存在を認識させる物質の有無などが関係するのだろうか?植物の世界は、不思議がいっぱいで興味深いです。

2023年5月 6日 (土)

ヤマウツボ

ヤマウツボは、光合成をしないで樹木の根(ブナ科、カバノキ科、ヤナギ科など)に寄生して生活している植物です。この不気味な姿の植物に初めて出会ったのは、富士山南麓でした。

時には、数十本の群落を見る事もあります。

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左は、花柱が姿を現し始めたばかりの若い個体です。

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こちらは、上より約200m低い標高の場所で撮りました。下半分くらい花冠が落ち、萼だけ残っています。

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萼には腺毛が散生しています。

ところで・・。

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ギンリョウソウモドキ(アキノギンリョウソウ)が姿を現す頃、この不思議なものと出会いました。その数年後、イノシシに荒らされたと思われる場所で、この物体が「白い多肉質の鱗片葉で覆われるヤマウツボの地下茎」である事を知りました。

ハマウツボ科ヤマウツボ属ヤマウツボ(Lathraea japonica Miq.)。旧分類体系では、ゴマノハグサ科に含まれていました。