菌従属栄養植物

2026年9月22日 (火)

その後のツチアケビ

今日は、遠方より従妹が墓参にやって来ました。その通り道脇に、出芽から観察して来たツチアケビがあります。従妹は都会に住んでいますが、自然観察が好きな人なので、それを見せたくて車を停めました。

ところが姿が見えません。どうしたのだろう?

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近づいて確認すると、花径ごと倒れていました。誰かに連れ去られてしまったのではなくて良かった・・。

ツチアケビは、塵のような種子を宿す蒴果が多いラン科植物の中では珍しく、液果の中に種子を宿します。そして、種子の運び手の一つが野鳥であることが、研究者によって明らかにされています。果実が赤い事や地表から少し上がった位置に果実が生る事なども、野鳥の目につきやすい特徴だそうです。ただ食痕のある果実は珍しく、黒くなるまで残っている場合が多いと認識しています。

発芽の確立を高くするために、ツチアケビが栄養依存するナラタケの菌糸が存在する場所・・親株の近くに散布される割合が多くなっているのかもしれません。この辺りの土と枯れ枝葉を採集して湿度維持した容器に種子を撒けば、実生発芽が出来るかも?なんて思っています。丹沢の師匠は、無菌播種ではなく菌床への直播で発芽に成功しています。別名をツルツチアケビと呼ばれているタカツルランの発芽にも成功している凄い人です。

ヤツシロラン類などの腐生ラン(菌従属栄養植物の野生ラン)に魅入られた師匠の手ほどきを受け、不思議な植物の一端を垣間見る事が出来ました。師匠に感謝です。

2026年8月26日 (水)

不法投棄監視パトロールで出会った植物

昨日は、月二回以上を義務付けられている不法投棄監視パトロールに行って来ました。山野の植物観察は、この機会くらいになりました。歩く回数が減ると、新鮮な目で植物に触れあえるような気がします。

ある林道の駐車スペース脇で・・。

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この黄色い葉が目に入りました。トウダイグサの葉だと思います。静岡県には、トウダイグサの仲間でフジタイゲキという種が生育します。行政関係者が緊急避難した株の種をいただき、実生苗を得ました。希少種ではありますが、元気な植物で現在4本の茎が伸びています。

黄色い葉のトウダイグサにつられ少し林内に入ると・・。

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なんと、ヒナノシャクジョウが生えていました。この林内では初めて確認しました。少し周辺を探しましたが他には見当たりませんでした。思い起こせば、こういう奇跡のような偶然は幾度かありました。この日も山の神様に感謝です。

ヒナノシャクジョウ科ヒナノシャクジョウ属ヒナノシャクジョウ(Burmannia championii Thwaites)。

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違う場所の林道脇では、ツルリンドウの花とツチアケビの果実を見る事が出来ました。ツルリンドウは地域の人工林内で普通に見られる種ですが、こうしてたまに会うと嬉しいものです。

このツチアケビの場所には、友人の研究者も訪れた事があります。ツチアケビは果実が見られた翌年は姿を現さない場合が多いですが、此処は昨年も姿を現していました。共生菌であるナラタケの菌糸が豊富なのかもしれません。林道脇は草刈りがされていました。この見慣れない植物をそのまま残してくれた業者さんにも感謝です。

ラン科ツチアケビ属ツチアケビ(Cyrtosia septentrionalis (Rchb.f.) Garay)。

2026年7月12日 (日)

ヒメヤツシロラン

この植物は、静岡県の山野では生育確認されておりません。2016年8月下旬に、研究のために採集された塊茎を友人の研究者が送ってくれました。産地は鹿児島県三島村です。当時は丹沢の師匠の指導を受け、地域のヤツシロラン類の実生栽培を学んでいました。

塊茎と共に一握りの現地の土が入っていました。プラ容器に焼成赤玉土を敷き、その土をバラまきました、そして、地域のササを切り裂き敷き詰めました。パネルヒーターで加温しながら、土壌湿度を維持しておきましたが、半年ほどして土を掘り起こしてみると塊茎は姿を消していました。それでも、菌糸が姿を現していたのでそのままにしておくと、2018年6月に一本の花径が伸びて来ました。

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そして、6月下旬にこんな花が咲きました。初めて目にするヒメヤツシロランの花に感激しました。

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花後の7月下旬に根が伸びて来て、8月~9月と菌糸が絡み付いた個所に、コブのような器官が姿を現しました。菌糸が共生菌である証です。

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2019年にも一本の花径が伸びて来ましたが、花径はか細く開花に至らず蕾が落下してしまいました。菌糸不足と思い、新たにササの刻んだものを容器内に敷き詰めました。

昨年も一本の花径が伸びて来ましたが、やはり開花に至らず蕾が落ちてしまいました。そして、一昨日久々に容器を覗いてみると・・。

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なんと、5本もの花径が姿を現していたのです。訂正:④と⑤の間にもう1本あったので、計6本でした。

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塊茎を送ってもらってから10年も小さな容器内で代を繋げていたのです。私の実験容器内ではありますが、国内外来種としてこのブログに掲載する事にしました(山野を歩く機会が少なくなってネタ切れ対策です)。

ところで、塊茎を受け取った半年後に確認した時は、生き残った塊茎は見つけられなかったのにどうして花径が伸びて来たのでしょう?プロトコームか見逃してしまうようなとても小さな塊茎が残っていて成長したか、土の中に種子が紛れていてそれが菌糸に栄養依存して発芽成長した事などが考えられます。

それともう一つ・・塊茎は複数の根を伸ばしますが、栄養繁殖はしないという認識を持っていました。もしかしたら、ウチョウランの仲間のように栄養繁殖もするのではないかなんて思いながら、容器内の花径を眺めました。

この報告を研究者にしようと思っていたら、昨日別件で久々のメールがありました。思い起こせば、こういう偶然は過去何度かありました。人使いの荒い依頼も多いですが、彼からの連絡は嬉しいものです。

※写真上で左クリックすると、横幅900ピクセルの写真がポップアップ表示されます。写真外で左クリックすると、ポップアップ表示は消えます。

2026年6月23日 (火)

ツチアケビの花

今日は、不法投棄監視パトロールに行って来ました。パトロールコースの林道脇で、ツチアケビの花が咲き始めていました。

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沢山の花径が伸びる事もありますが、1~2本だけの所は翌年から数年見られないことが多いです。この場所は、昨年花径が倒れてしまったせいか今年も伸びていました。オニドコロの蔓が触れ止めになっているようですね。

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ツチアケビは、ラン科植物です。縁にギザギザのある黄色い唇弁は、洋ランのデンドロビュームを思わせて奇麗です。

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下手に手を触れると、花柄子房と共にポロポロ落ちてしまう事があります。チリのような種子を宿す蒴果が多いラン科の中でも、この種は果肉の中に種子を宿す液果です。しかも、光合成をおこなわず、ナラタケに栄養依存している変わりものです。

ラン科ツチアケビ属ツチアケビ(Cyrtosia septentrionalis (Rchb.f.) Garay)。


◇追記◇
6月24日13時過ぎに、Niftyさんから「【重要】メールパスワード漏えいの可能性に伴う変更手続きのお願い」というタイトルでメールが送られて来ました。「メールアドレスおよびメールパスワードが第三者に漏えいした可能性がある」ので、ログイン及びメールパスワードの変更を25日中にしてほしいとの内容でした。早速、Niftyのホームページにアクセスして変更手続きを行い、新しいパスワードで本ブログにアクセスし、記事に追記をしています。

こういう関係のパスワードは、紙ベースで一覧表を作って家族にもその所在を告げてあります。電子マネーも含めて、世の中はとても便利になって来ました。でも、セキュリティー対策が追いつかず、便利と危険が表裏一体のような感じがして、年寄りには馴染みにくいです。

2026年5月 3日 (日)

「森に咲く銀色の花」ギンリョウソウ

友人の研究者から本が届いたので紹介いたします。株式会社福音館書店発行の「月間たくさんのふしぎ」シリーズです。同シリーズでは、「「植物」をやめた植物たち」という本を、以前紹介させていただきました。

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表紙の写真(左)と静岡県中部某所で私が撮った写真(右)です。ピンク色のこのギンリョウソウ属は、2022年11月30日の0時に放送・Web解禁で新種として発表されたキリシマギンリョウソウです。その後、県内複数個所で生育が確認されたようです。

出版社の案内には「小学生向き科学雑誌」とありますが、中を見ると他の雑誌や図鑑に書かれていない内容で大人向けとしても読み応えがあります。少し難しい内容ですが、豊富な写真とイラストでとても分かりやすく解説されています。新種記載における着眼点や手順、そして研究者のご苦労の一端を垣間見る事が出来て、とても興味深いです。

興味ある方は是非読んでみてください。2026年6月1日発行/発行所 株式会社福音館書店〒164-0012東京都中野区本町2-46-1-2F。定価880円(本体800円+税10%)です。

2025年7月12日 (土)

ツチアケビの花

不法投棄監視パトロール以外で、山野を歩く機会は殆ど無くなりましたが、今年二ヶ所目のツチアケビに出会いました。

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夕方の薄暗い林床に、ひっそりと佇んでいました。ツチアケビは群生することも、単体で生えることもあります。後者の場合、順調に果実を実らせた場所では翌年姿を現さず、数年後にまた花茎が伸びてくることがあります。

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ツチアケビはラン科植物です。洋ランのデンドロビュームのような唇弁がとても綺麗です。

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研究者によって、種子の運び手の一種が野鳥(ヒヨドリ)であることが確認されています。でも、写真のような食痕がある果実を見るのは稀です。

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果実は、蒴果ではなく地域に生育するラン科植物としては珍しい液果を付けます。果肉が黒化して熟れた後には、翼のある小さな種子が残ります。

ここからは素人の考察です。種子は野鳥やシカなどに食べられて散布されるも、それは稀だと思います。前記したように食痕のある果実はあまり見かけず、晩秋に黒くなるまで残っている果実が結構見られます。野鳥やシカにあまり好まれない味なのかもしれません。野鳥などに食べられた種子は親株から離れた場所に運ばれ、栄養依存するナラタケが存在する可能性の高い親株の周りには、黒化してボロボロになった果実から多くの種子が散布されると思っています。

ところで、種子の翼は何のためにあるのでしょう?蒴果なら風によって飛散する役目と考えられますが、液果の場合はどんな役割をするのだろう?

ラン科ツチアケビ属ツチアケビ(Cyrtosia septentrionalis (Rchb.f.) Garay)。中国名は「血紅肉果蘭」・・特徴をよく捉えた種名だと思います。


昨日は、役所での会議がありました。元職時代は現場でも会社でも、面倒なくらい多くの会議や打ち合わせがありました。会社勤務から離れ、家と畑の間で引きこもりのような生活を送っていると、会議や打ち合わせを負担に感じるようになります。最近は出不精になり、買い物もネット注文を家族に依頼しています。困ったものです。

2024年10月14日 (月)

本の紹介

2023年7月末に、【月間たくさんのふしぎ「植物」をやめた植物たち】という本の紹介をしました。その本は、発売早々に売り切れてしまいましたが「たくさんのふしぎ傑作集」として再版されることになりました。

「植物」をやめた植物・・ほとんどの植物は、光合成により成長に必要な養分を自分で作り出していますが、光合成をやめて菌類から100%養分をもらって生きている植物があります。地球上には約30万種の植物が生育していると言われていますが、そのうち約1,000種は光合成をやめた植物だそうです。

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出版予定日は2024年11月8日で、現在Amazonnなどで予約受付中です。価格は税込み1,430円です。単行本となり表紙も厚くなった(ハードカバー化された)ため、雑誌だった初版発売時とは価格が上がっています。

発行所は、株式会社福音館書店です。こちらの「これから出る本」のページからも購入できます。初版年月日は、2024年11月10日となっています。Amazonnと違っていますので、申し込みの際はご確認ください。

難しい分野ですが、児童向けという事もありイラストを交えてとても分かりやすく解説されています。一般の人がなかなか出会う事の出来ない珍しい植物達がいろいろ掲載されていて、植物観察を趣味としている大人にも非常に興味深い本だと思います。管理人にとっても、思い出深い写真が幾つか掲載されています。

2024年10月 3日 (木)

やっと見つけたクロヤツシロラン

例年なら、山間地のクロヤツシロランは、花も終盤になり果柄が驚くほど伸び始める頃です。ところが、それが見当たりません・・。

今日は、未耕作畑の草を刈った後で、別の山林を調べてみました。

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探索したのはこんなスギ林です。所々に野生動物の蒐場があります。念のため、長年一人探索の相棒を務めてくれた武道具の杖(つえでなくじょうと読んでください)を持っていきました。

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シックイタケの菌糸でしょうか?

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40分ほど探して見つかったのはこの一個体だけでした。昨年沢山見つかった倒木の脇は、全然見つかりませんでした。歳と共にセンサーの感度が鈍って来たのかも?

昨年よりも更に暑い日が続いたために、塊茎が腐ってしまったのか?それとも、まだ日中は30℃を超す様な日があるので花茎が伸びて来ないのだろうか?でも、やぶ蚊の多さは例年と変わりません。

2024年10月 1日 (火)

今年も遅いアキザキヤツシロラン

土・日は、町内のお祭りの準備や片づけがありました。幸い、当初の大雨予報が外れたおかげで無事に終了しました。諸々があって遅くなってしまった植物の調査に、昨日行って来ました。

依頼を受けたのは、アキザキヤツシロランの調査です。

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やぶ蚊に刺されながら孟宗竹林内に入ると、所々でこんな光景が目に留まりました。腐生ラン(菌従属栄養植物)に興味を持つ前は「気持ち悪い!」と感じるだけでした。腐生ランは、発芽から生育まで100%菌類に栄養依存しています。写真の菌がアキザキヤツシロランの共生菌かは分かりませんが、そうだとしたらこの林内での個体数が期待できます。

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彼方此方探して見つかったのはこの蕾だけでした。昨年も、初回の探索で発見したアキザキヤツシロランは数個体だけでした。その後、複数回訪れ例年(の見頃)より一月以上遅れていることが分かりました。今年はさらに遅いような印象を持って孟宗竹林を後にしました。

草刈のボランティアに参加している富士市沼川遊歩道沿いのヒガンバナも出現が遅れて心配でした。Webニュースで、埼玉県日高市の巾着田のヒガンバナも例年に比べて遅れていることを知りました。秋に咲く花は、気温の低下を感じて開花するそうです。アキザキヤツシロランも、猛暑のせいで地上部に姿を現すのが遅れているのではないかと思います。

2023年10月12日 (木)

予想以上に遅れたアキザキヤツシロラン

また新たな依頼を受けて、アキザキヤツシロランの生育するモウソウチク林に行って来ました。以前の記事で、今年は天候の影響もあり1~2週間遅れではないかと書きました。でも、この日現地を見て、この竹林においては一月以上の遅れと訂正します。

例年なら、彼方此方に子房が上を向き果柄の伸びた姿が見られる頃です。ところが子房が上を向いているものはあっても、遠目から目につくような果柄の長さのものはなく、まだ蕾の個体が沢山見られました。

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この場所で、今頃こんな光景が見られるなんて予想もしませんでした。

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今年は、前回迄の訪問時に、上のような太い花茎の個体があまり見られず心配でした。

上手く撮れませんでしたが・・。

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ここだけで、十数個体生えていました。初回訪問時は、林内各所でこんな光景が見られると思っていました。それが数個体しか確認出来ず、狐につままれたような思いでした。

私が知る県東部の竹林では、この場所が一番個体数を見る事が出来ます。遅れたとはいえ、例年と同じような光景が見られて本当に良かった!

ラン科オニノヤガラ属アキザキヤツシロラン(Gastrodia confusa Honda et Tuyama)。タイプ産地は、和歌山県日高郡湯川村(現御坊市)とあります。