草本

2024年9月 5日 (木)

コバノカモメヅル

山野を歩くことが少なくなりましたが、山間の地に住んでいるので気になる植物に出会う機会は多い方です。畑の近くにコバノカモメヅルの花が咲いていました。

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沢山咲きますがとても小さな花です。

良く似た植物でコカモメヅルがあります。和名も紛らわしいですね。以前撮った写真ですが・・。

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花冠の裂片がコバノカモメヅルの方が長く花も大きいですね。葉の形態も少し異なりますが、花が無いとわかり難いと思います。

キョウチクトウ科カモメヅル属コバノカモメヅル(Vincetoxicum sublanceolatum (Miq.) Maxim. var. sublanceolatum)。

キョウチクトウ科カモメヅル属コカモメヅル(Vincetoxicum floribundum (Miq.) Franch. et Sav.)。

旧分類体系では、ともにガガイモ科とされています。


今日から日曜まで外せない予定があります。畑にも行けないため、次に行った時の雑草の状態を考えると恐ろしいです。たまには家族に手伝ってもらいたくて、その話をすると二人とも目線を逸らしてしまいます。少しは草取りも覚えてもらいたいのですが・・。

2024年8月21日 (水)

ナギラン

今朝は6時前に家を出て、県中部某所へ行って来ました。やぶ蚊とクモの巣に悩まされながら歩いていると、ナギランが目に留まりました。

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一株、二株・・この植物を知らなければ、オオバノトンボソウと間違えたかもしれません。

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60cmくらいの範囲に、三株確認できました。

オオバノトンボソウより葉が固く葉柄が長いので、見慣れると花期以外でも区別出来るようになります。この植物に出会いたくて県中部の荒山を駆け巡ったことがあります。思い入れも植物の識別に役立っているようです。

この植物は静岡県において「伊豆、東部、中部、西部の記録があり、西部は各地にある。他地域は少ない。」とあります。私の住む東部では記録はあるものの未確認だったので、中部に足を延ばして初めて出会う事が出来ました。その一週間後、オオバノトンボソウが多くみられる東部某所で、花をつけたナギランに出会いました。希少植物との出会いはそんなものです。

ラン科植物は、光合成をしながらも菌類に栄養依存していることが知られています。また塵のような種子は養分を殆ど持たないため、発芽も菌類に栄養依存しています。ナギランは、立派な葉を持ち御覧のように新葉も伸びていますが、他のラン科植物に比べて菌への依存度が高く、暗い場所でも生育出来るそうです。ただ菌類が好みそうな湿潤な場所というより、乾燥気味の斜面で見ることが多いように思います。

早起きして県中部まで行った目的?それは秘密です。目的は無事達成でき、義母の笑顔を見て帰路につきました。

ラン科シュンラン属ナギラン(Cymbidium nagifolium Masam.)。

2024年8月18日 (日)

マネキグサ

シソ科の植物は、富士市植物仮目録2023年中山Ver.(富士市が公開したものとは異なります)に約60種記載されています。比較的群生を見る種が多い中で、希少種とされる種もあります。このマネキグサも環境省、静岡県ともに準絶滅危惧(NT)に指定されています。

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花は小さいですが、暗紅紫色に白い縁取りがとても印象的です。

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見比べると、花形にも個性があって面白いです。

シソ科マネキグサ属マネキグサ(Loxocalyx ambiguus (Makino) Makino)。オドリコソウ属(Lamium)に分類されることもありますが、最新のYlistに倣いました。


生育地では数えきれないほどの個体数を見る事が出来ます。地下茎による栄養繁殖が盛んなだけでなく、実生苗も結構確認できます。それなのになぜ「稀」なのでしょう?

それは種子散布方式に原因があるのではないかと思っています。この植物の種子は重力散布されるのではないでしょうか?鳥や獣、或いは風により散布されるのならもっと彼方此方で見られると思います。湿地の植物で同じくシソ科のヒメハッカは、種子が重力散布されます。そして、他の植物が繁茂する自生地に於いて実生苗と思われる丈の短い芽の大半は、地下茎から伸びたものです。これは、栽培実験で確認しています。植物がどういう経緯で現在のような生態(繁殖方式)を選択したのか想像するのも楽しいです。

2024年8月10日 (土)

キツネノカミソリ

年々行動範囲が狭くなり、世間から取り残されている昨今です。それでも、庭や畑で季節を感じる事が出来ます。

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隠れ里のような畑の入り口に、キツネノカミソリが咲いていました。

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キツネノカミソリは結実するものとしないもの(三倍体)があるそうです、ここの個体はどれも果実が膨らんでいました。

ヒガンバナ科ヒガンバナ属キツネノカミソリ(Lycoris sanguinea Maxim. var. sanguinea)。

和名の由来は諸説あるようですが・・。「キツネ」の顔に似た形状の花と日本古来の「カミソリ」に似た形状の葉から「キツネノカミソリ」と名付けられたという説がしっくり来ます。

2024年7月30日 (火)

ムカデラン開花

ムカデランは、古い資料では静岡県東部・西部・北部の記録があります。環境が合えば大株になる種なので、新たな生育地が追記されているものと思われます。

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東部ではN先生の記録がありますが、花の接写が出来る場所ではありません。掲載写真は庭木に着生させたものです。

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とても小さな花ですが、見比べると萼片や花弁に変異があります。

「生育地は向陽地の樹幹や岩」とありますが、あまり陽当りが良すぎると葉が変色し次第に痛み枯れ死するように思います。南面に着生させたのに北面に長く伸びています。環境が合えば短期間に大きな株になるようです。


「山間の地では、集落全体が失われゆく照葉広葉樹林の代わりになっている」ことに注目した常葉大学の学生さんたちの調査に立ち会ったことがあります。集落の庭木などで出会った着生ランは、カヤラン、ヨウラクラン、クモラン、ムギラン、そして栽培品を着生させたフウラン、セッコクなども見られました。私はそれらの果実を見ていますが、ムカデランの果実はまだ見たことがありません。送粉者がいないのだろうか?あまりにも小さな花なので、人工授粉できるか分かりませんが挑戦してみようと思います。

2024年7月27日 (土)

ヤマユリ

不法投棄監視パトロールで行った林道脇に、ヤマユリが咲いていたので撮ってみました。

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もう花も終盤に近いと思っていたのですが、まだツボミばかりの株もありました。

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とても良い香りが漂っていました。花数は「一輪一年」と言われるそうですが、こちらの株は7個の花が咲いていました。

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衣類にこの花粉が付くと洗濯してもなかなか落ちないで、よく母親に叱られたものでした。

スギやヒノキが植林されて間もないころは、各所で見る事が出来た植物です。川を挟んだ対岸の群落から芳香が漂ってくることもありました。木が成長して生育適地が無くなったことと、野生動物による食害も減少の大きな要因だと思います。

ユリ科ユリ属ヤマユリ(Lilium auratum Lindl.)。


昨日は、果樹を植えて放置状態だった畑の除草と剪定に行って来ました。朝は少し涼しさを感じましたが、作業を開始しると汗びっしょり・・シャツとズボンが肌に纏わりつき動きにくかったです。

果樹などの木本を植える時に、十数年後の正しい姿を思い描ける人は少ないと思います。間隔を空けて植えたつもりだった果樹は、枝同士が覆いかぶさるような状態でした。大きくなりすぎて移植もできないので、切り詰め或いは伐倒することにしました。周囲の除草や枝を剪定した後、大きくなった桑の木を伐倒し短く切断するのに半日ほどかかりました。

2024年7月25日 (木)

タケニグサの花

7月8日に富士山こどもの国で行われた中学生の写生大会で、「タケニグサの花は花弁がない」という説明をしたのですが、生憎開花している花は無く蕾ばかりでした。

地域の林道に咲いていたので撮ってみました。

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先端部は蕾。「基部に桃色を帯びている白色の萼片2枚は、朝開花した時に分離し落下する」とあります。萼片が割れた状態の写真は貴重ということになります。

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こちらが開花状態。白色の糸状のものが雄蕊で、上部に葯が確認できます。中央にある淡桃色の痩せたこけしのような部分が雌蕊です。

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そして下部は、しゃもじのような子房(果実)です。結実率が高いですね。種子はエライオソームがついているとの事なので、熟したころに観察してみるつもりです。

ケシ科タケニグサ属タケニグサ(Macleaya cordata (Willd.) R.Br.)。


ところで、幼いころに運動会で「茎を切ったオレンジ色の汁を脛に塗ると早く走れる」というようなことを言われた記憶があります。植物に目を向けるようになって図鑑の解説を見ると、アヘン系植物アルカロイドが含まれ有毒とあります。

私の記憶違いかと思って近い年齢の知人に聞くと、複数人が同様の事を聞いたと言っていました。アルカロイドが麻酔薬と同じ成分であることが、足を軽く感じさせると言う事なのだろうか?いずれにしても有毒で、皮膚に炎症を起こす人もいるそうなので安易に触らないようにしましょう!


今日は月2回以上を義務付けられている不法投棄監視パトロールに行って来ました。その後畑に立ち寄り電気柵外の草刈を行いました。朝は少し涼しいと思ったのですが、ズボンやTシャツは汗で重たくなっていました。シャワーを浴びてやっと生き返りました。この暑さ、いつまで続くのでしょう?

2024年7月20日 (土)

ハゼランの花

夕方庭を歩いていると、ハゼランが咲いていました。ハゼランは南米原産で明治初年に園芸植物として渡来したそうです。

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奇麗な花ですが、とても小さいです。

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訪花昆虫は、小さなアリとこのコバエだけでした。

ハゼラン科ハゼラン属ハゼラン(Talinum paniculatum (Jacq.) Gaertn.)。旧分類体系では、スベリヒユ科とされています。


「ハゼランはスベリヒユ科の一年草」と書かれた本があります。ところが庭のハゼランを何年か見て来て、多年草ではないかと思っていました。調べてみると、原産地では多年草だが渡来したころの日本では一年草として扱われ、温暖化により冬越し出来るようになって、多年草と訂正されたようです。
「ハゼランは午後の2~3時間しか開かない」とあります。また花は午後三時頃咲くので「三時草」「三時花」「三時の貴公子」「三時の天子」などと呼ばれている地域もあるそうです。杉野孝雄先生が地域の一個体について開花時間を調べたところ、16時頃咲く花が50%くらいと一番多く、「17時30分頃から萎み始め18時30分にはほぼすべての花が萎んだ」とあります。

夕方咲き短時間で萎れてしまう花の送粉者はどんな生き物だろう?外国の調査では、何種類かの訪花昆虫はいたがかなり少ないとあります。そしてハゼランは自家受粉の割合が高いことが分かっているそうです。

親株が生育している場所の環境に合う遺伝子を持つ子孫を残すため自家受粉を行い、病気や環境変化に対応できる多様な性質の遺伝子を残すために訪花昆虫による他家受粉を行っていると考えられているそうです。前者を優先させるために訪花昆虫の少ない夕方開花し、また開花時間をセーブしているということでしょうか?視点を変えて見ると、庭の植物達も非常に興味深い生き方をしていますね。

2024年7月11日 (木)

キツリフネ

キツリフネの花を初めて見たのは、富士山南面の1,400m辺りでした。そのため下界で見たツリフネソウより開花が遅いと思っていました。その後、高度300~400mでキツリフネと出会い同じ高度ではツリフネソウより開花が早いことを知りました。

畑と植物園の作業ばかりしている内に、富士山は山開きして山野では様々な花が咲き乱れています。高度400mくらいに咲いていたキツリフネを撮ってみました。

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ツリフネソウ属の花は面白い形をしています。蜜が距の中に溜まるため嘴の長い昆虫でないと蜜を吸う事が出来ません。送粉者はトラマルハナバチだそうで、花の中に頭を突っ込んで蜜を吸うため効率的な受粉が行えるとあります。

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蕾も面白いですね。

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こちらは果実のようです。ツリフネソウ属は一年草です。種子散布する前に刈り取られてしまうと、絶えてしまいます。道路脇で見かけたピンクのツリフネソウは、残念ながら姿を消してしまいました。

ツリフネソウ科ツリフネソウ属キツリフネ(Impatiens noli-tangere L.)。別名をホラガイソウというそうです。こちらの方がイメージが湧きやすい感じがします。


キツリフネの方が開花時期が早いと書きましたが、最速最遅の花同士で交雑することはないのだろうか?Ylistには、沢山のツリフネソウ属とその品種が掲載されていますが、Impatiens noli-tangere×Impatiens textoriiは見当たりません。

Web検索すると、「ツリフネソウ-キツリフネにおける異種花粉の受粉における繁殖成功度の低下」という論文が見つかりました。長野県安曇野市では、ツリフネソウとキツリフネの分布と開花時期が重なっているそうです。両種とも送粉者はトラマルハナバチですから、種間送粉が行われます。ところが「異種花粉が混入した場合結果率(花が果実になる割合)が大幅に減少し、同種花粉が先に受粉してもその後異種花粉が受粉すると結果率が低下する」とあり、交雑するとは書かれておりません。

交雑種を期待していましたが、それは望めないようです。同属なのにどうして交雑種が出来ないのでしょう?分布や開花時期が重なる種を守るための進化の一例と言えるようです。植物の生き残り戦略は、多様で興味深いですね。

2024年7月 6日 (土)

ミズオトギリとヌマトラノオ

湿原に生育する植物に出会う機会は少なく、特別な思い入れを持って見てきました。同時期に開花するミズオトギリとヌマトラノオは、浮島ヶ原自然公園で出会ったのが最初でした。

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左がミズオトギリで、右がヌマトラノオです。掲載写真は、地域産の種子を採取して育てたものです。

ヌマトラノオは県内各地で生育確認されており、「稀ではない」とか「やや普通」と表現されていますが、湿原自体が少ないので、どこでも見られるわけではありません。湿原に生育する植物のうち地下茎で栄養繁殖する種は、適正な環境なら群落を形成します。ただ土壌が乾燥化すると、草丈が短くやがては姿を消していきます。ヌマトラノオとオカトラノオは開花時期が同じなため、交雑種のイヌヌマトラノオが生育確認されている場所があり、静岡県東部では田貫湖が挙げられています。

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静岡県植物相調査報告書によると、静岡県東部におけるミズオトギリの生育地は田貫湖と浮島沼で、花は午後3時から4時頃開花するとあります。田貫湖の生育地は、今年初めて確認しました。

ミズオトギリもヌマトラノオと同じく地下茎で栄養繁殖しますが、ヌマトラノオの方が繁殖力は旺盛で田貫湖の生育地ではその違いが如実に表れていました。

オトギリソウ科ミズオトギリ属ミズオトギリ(Hypericum crassifolium (Blume) Nakai)。

サクラソウ科オカトラノオ属ヌマトラノオ(Lysimachia fortunei Maxim.)。


このところ異常に暑い日が続いています。木曜日には、畑の除草と遅ればせのジャガイモを収穫しました。デストロイヤー(グラウンドペチカ)を二畝だけ収穫するのに、あまりの暑さに危険を感じ幾度も木陰に退避しました。残りの種は後日です。

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