野生ラン

2024年5月 5日 (日)

コケイランと不明な植物(セリバヒエンソウ)

先日、ある場所の探索をしていてコケイランに出会いました。その後の予定もあり急ぎ足で探索しましたが、約百メートルの範囲で開花株が5株見つかりました。

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最初に見つけたのは、駐車した車の前でした。植物に興味のない嫁さんでは、指さしても気づかないかもしれません。

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こちらはスゲの生える湿地の近くです。葉が見当たりませんでした。近くに生えるサイハイランも花後に葉が枯れ、秋に新葉が姿を現します。開花株でも葉の枯れる時期に個体差があるようで、まだ青々したものもありました。同属のコハクランに比べて柔らかでシュロソウを思わせるような感じです。

静岡県内の諸先輩のWebページに掲載されているコケイランの花の唇弁は、上右の写真のように無地のものが多いと思います。ところが隣県の山で見た個体には紅紫色の斑点がありました。Wikipediaにも同様の解説がされています。

気になるのは、低山の個体は小川脇など湿り気の多い場所で見られますが、隣県の個体はススキの生える小さな山の上に生えていました。とても湿り気の多い場所というような感じではありません。もしかして変種?なんて思っています。

ラン科コケイラン属コケイラン(Oreorchis patens (Lindl.) Lindl.)。


次に行った場所で出会ったこの植物・・葉は見ていたかもしれませんが、花は初見だと思います。⇒セリバヒエンソウと教えていただきました。nohana様、有難うございました。原産地は中国で明治時代に渡来した帰化植物とありますが、研究者による逸出帰化との記述もあります。

キンポウゲ科デルフィニウム(オオヒエンソウ)属セリバヒエンソウ(Delphinium anthriscifolium Hance)。

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花には距があり、その外側には毛が生えています。少し明るい林縁に生えていました。この植物の名前がわかる方、教えてください(静岡県東部富士宮市にて撮影)。


一昨日は再生畑の未耕作エリアの草刈、今日は別の休耕畑の草刈と耕運機かけをやって来ました。休みながらゆっくりやればいいのですが、せかせかやるので流石に疲れました。性分なので仕方ありません。まだ残った作業があります。頭の痛いことです。

2024年3月24日 (日)

カヤランの苗再び

ツツジの枝に生えてきたカヤランの実生苗を、追跡観察してみました。

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当初は、クモランの葉状体(仮称)かと思っていたカヤランの発芽間もない姿です。

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こちらは、葉状体の端部から普通葉が出ています。

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左には普通葉が2枚見えます。普通葉だけが2~3枚の個体を見かけますので、そのくらいまで成長すると葉状体は姿を消すようです。クモランでいえば、葉緑素を持った着生根が伸びた頃に姿を消していきます。発芽間もない苗の栄養補助器官のようなものだと思います。

右はカヤランの果実です。一般的なラン科植物の果実と違い、果皮の片側だけが裂開します。種子が飛散するころに、蕾を見ることが出来ます。沢山のカヤランの苗を見て、森町の古民家で見たフウランの実生苗を思い出しました。イヌマキの枝にびっしり生えていました。そういえば果実や種子の形態が似ています。毛糸の繊維のような種子は、風で飛ばされ樹皮に留まりやすいようです。

ラン科カヤラン属カヤラン(Thrixspermum japonicum (Miq.) Rchb.f.)。

ヨウラクランの苗

山間の地にある我が家の庭木では、いろいろな着生ランを見ることが出来ます。種子発芽からどのように成長していくのか、観察してみたいと思っていました。

イヌマキの枝に着生していたヨウラクランの実生苗を撮ってみました。接写用のコンデジを使いましたが、あまりに小さいのでピンボケになってしまいました。

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こちらの苗は、スケールで測ってみると葉幅が1mmに満たないとても小さなものです。

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こちらが、今回見つかった一番小さな発芽苗です。上に写っているのはセッコクの着生根で、直径1mm程度です。苗がいかに小さいか分かると思います。

ラン科は単子葉植物です。一枚葉の苗を探していますが、まだ発見できません。

ラン科ヨウラクラン属ヨウラクラン(Oberonia japonica (Maxim.) Makino)。


着生ランの根は、水分や養分を吸収・貯蔵する特殊な構造をしているそうです。でも、乾燥により枯れてしまう実生苗も多いと思います。枝に着生する個体は枝の上側ではなく、下側についているものが殆どです。

あるWebページに、温帯から亜寒帯に生育するラン科植物の種子は、完熟すると休眠に入り冬の寒さを経験させないと休眠から覚めない・・というようなことが書かれていました。地域に生育する着生ランは、今頃果皮が裂開し種子を飛散させるものがあります。種子を飛散させる時期によって、例外もあるのではないでしょうか?

2024年3月14日 (木)

姿を消したコクラン

再生畑の隣に、スギ・ヒノキの混合林があります。林床にはコクランが生えていました。様子を見に行くと、姿が見えません。どうしたのだろう?

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上部を何ものかに食べられていました!

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こちらはオオバコのようです。最初はシカかと思ったのですが、他の食痕や足跡からもウサギではないかと思われます。

以前撮った写真ですが・・。

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コクランは、クモキリソウ属(Liparis)とされていて、同属他種は冬に地上部の枯れるものが多いですが、基本的には冬に地上部(葉)が枯れません。

先生から「日本で生育が確認されたラン科植物」の一覧表をあずかり、新記載種やDNA情報の解析により、属名(学名)の変更になったものを追記・訂正しています。少し前までは、コクランは上記のようにクモキリソウ属(Liparis)とされていましたが、最新のYlistでは、下記の二つの学名が標準として記載されていて、従来の学名Liparis nervosa (Thunb.) Lindlは、synonymとなっています。

Empusa nervosa (Thunb.) T.C.Hsu:文献情報(原記載文献など): Orchadian 15: 40 (2005).
Diteilis nervosa (Thunb.) M.A.Clem. et D.L.Jones:文献情報(原記載文献など): in T.C.Hsu & S.W.Chung, Ill. Fl. Taiwan 2: 18 (2016).

2023年4月11日付けの編集によるYlistでは、他の種でも標準学名が2種類記載されたものがあります。これはどうしてでしょう?

2024年2月24日 (土)

カヤランの実生苗

家族が休みの日は、できるだけ外出しないで家にいます。ところが、今日は見捨てられ一人ぼっちでした。PC作業に飽きたので、萌がいたら・・なんて思いながら、裏庭植物園を眺めて歩きました。

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カヤランの着生していたツツジの枝を見ると、前回見逃した枝に沢山の実生苗が生えていました。

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左は上右の枝を少し角度を変えて接写しました。そして、この枝の裏側を見たのが右の写真です。あれっ?クモランの発芽初期に見られる葉状体(仮称)のようだ!

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こちらの枝にも、同じようなものが見えています。これはカヤランだろうか?さらに右のマメヅタの赤ちゃんのようなものは?

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この写真をよく見ると、片方(写真の上側)は葉状体のような形態で、もう片方は先端が尖ったカヤランの成長した株と同じ形態の葉が見えています。葉状体のようなものはクモランではなくカヤランの発芽間もない姿のようです。これも、クモランと同じく葉ではなく胚芽に由来する(発芽苗の茎のような)部分で、普通葉が成長し根が伸びるとともに姿を消していくのではないかと思います。

掲載した写真で発芽したてに一番近いのは、マメヅタの赤ちゃんのような上右の写真のようです。クモラン同様、庭木に着生していたからこそ気付いたことです。今後は、この葉状体のようなものの変化を観察していくつもりです。

成長が遅く・・と書かれたWebページもありますが、盆栽や庭木に着生しているヨウラクランやカヤランは、ラン科植物にしては開花に至るのが速い方だと思っています。

ラン科カヤラン属カヤラン(Thrixspermum japonicum (Miq.) Rchb.f.)。

2024年2月18日 (日)

ヒメフタバラン(県東部)

この野生ランに初めて出会ったのは、十数年前の五月連休でした。同じくらいの標高にも見られるアオフタバランや、亜高山帯に生育する種は初夏以降に咲くのに、もう花柄子房の膨らみ始めたものもありました。発見時点では、種名が分かりませんでした。

数年後に別の場所でも見つけましたが、いずれも個体数は少なく極狭い範囲でしか見られませんでした。県西部で大群落に出会うまではそういう種だと思っていました。

一番高度の低いところでは、そろそろ姿を現しているかもしれないと思い、様子見に行ってきました。

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冬に地上部は枯れますが、新たな葉が展開していました。右には蕾を持った個体が見えています。

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ヒメフタバランは、地下茎で栄養繁殖もします。掘ってみないと分かりませんが、こちらは栄養繁殖苗かな?

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花期は、3~5月とあります。この場所では、3月に花が見られるかもしれません。ヒメフタバランは、光合成をしながら主としてロウタケ科の菌類にも栄養依存しているそうです。ロウタケ科というとキンランやササバギンランなどの菌根菌としても挙げられています。

ラン科サカネラン属ヒメフタバラン(Neottia japonica (Blume) Szlach.)。フタバラン属(Listera)はDNA情報による解析の結果サカネラン属(Neottia)に改められました。

オオフタバラン(Makino 1893)の別名もあります。この場所の個体はそれほど大きくありませんが、30cmくらいになるものもあるようです。フタバラン類の中では大型に属する事から牧野博士によって命名されたようです。

2024年2月 6日 (火)

ヨウラクラン

この野生ランに初めて出会ったのは、庭の八重枝垂桜の樹幹でした。その後鎮守の森のアカシデやタブノキでも見ることが出来ました。

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地域で見る着生ランの中では、成長が早い方だと思います。

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左は、何が原因なのか昨年の花後に枯れてしまいました。それまでは、とても元気そうでしたが・・。ヨウラクランを見た一番高い高度は約1,000mくらいの場所で、樹上に沢山着生していました。そこでも、いつの間にかすべて枯れてしまいました。

右はツツジの幹で見付けた菌糸です。生きた木の樹皮に、このような菌糸を見るのは稀です。着生ランの共生菌が、このような目視できる菌類なら面白いのですが・・。

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比較的日照がいい場所だと、葉が黄色みを帯びていることがあります。

ヨウラクランは、数えきれないほど沢山の花をつけますが、私が見てきた範囲で結実するものは極稀です。でも、あちこちに苗が姿を現しています。隣に着生しているムギランは、結実率は高いようですが苗を見ることは稀です。ただ栄養繁殖で驚くような大株になります。

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イヌマキの枝に生えてきたヨウラクランです。沢山見える着生根はセッコクです。

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こちらは、シダ植物のシシランの鉢植えです。シダ植物は彼方此方で見かける種でも、栽培するのに気難しい一面があると思っています。植物園導入のために鉢植えで2年ほど栽培・観察しています。その株元に出現したヨウラクランです。手前のシラガゴケと比べて小さいことが分かると思います。ラン科植物は、単子葉植物です。発芽したての一枚葉の個体を見たいと思っているのですが、まだ見つけられません。

2024年1月27日 (土)

生きていたクモラン

八重枝垂桜の幹にクモランを発見したのは、数年前の事でした。ところがその個体は乾燥により枯れてしまいました。

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こちらが、この木で最初に発見したクモランです。比較的大きな株で、沢山の果実をつけていました。

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周囲を見ると、新たな株が着生していました。上の大株の子孫ではないかと思います。クモランは葉が退化し、葉緑素を持つ扁平な根で光合成を行っています。左の写真に写っているピンボケの白い着生根は、セッコクの根です。

ところで・・。

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こちらを見ると、白っぽい光沢のある部分と鮮やかな緑色で幅広の部分があります。前者は上の写真と同じ根で、後者は葉状体(仮称)です。種子が発芽して最初にこの葉状体が姿を現します。そして根が伸びやがて葉状体は姿を消していきます。葉状体は葉ではなく胚軸に由来する(発芽苗の茎のような)部分だそうです。

初めてクモランを見たときは、この葉状体に気づきませんでした。様々な進化を遂げてきたラン科植物の魅力は、こういう面白い生態にあります。庭木の植物観察も楽しいです。


山野を歩く機会も少なくなり、ブログの更新間隔が長くなってしまいました。それでも、ご訪問くださる方がいて嬉しいです。また、良いね💛も有難うございます。

2024年1月20日 (土)

ツツジに着生するカヤラン

我が家には、家の裏に生け垣で囲まれたミニ植物園があります。父母が植えたものに、私が苗から育てたカエデ属などがひしめき合っています。間引きした方がすっきりして良いのですが、どの植物にも思い入れがあり踏み切れません。

ツツジの木を剪定していると、その中の一本に15個体以上のカヤランが着生していました。

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蕾をつけたものや、果実の付いたものもありました。カヤランは、花の咲くころ細長い鞘が裂開し、種子を飛散します。

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以前撮った花を掲載します。カヤランの花はとても小さいけど、接写してみると洋ランを思わせるような綺麗な花です。バンダやコチョウランの近縁種とされています。

ラン科カヤラン属カヤラン(Thrixspermum japonicum (Miq.) Rchb.f.)。


ラン科植物は、種子に発芽の養分をほとんど持っていないので、菌類に栄養依存して発芽するそうです。樹上に着生するラン科植物は、樹皮に存在する菌類で発芽したことになります。腐生ランの実生栽培床では、湿度を維持していると(種は分かりませんが)菌糸を目視することができます。着生ランが栄養依存する菌類は、どんな状態で樹皮に分布しているのだろうか?目を凝らしても分かりません。

カヤランが着生する樹種は様々で、他の着生ランよりも栄養依存する菌類が多様なのかもしれません。今まで着生を確認した樹種は、スギ、ヒノキ、サクラ、ウメ、アセビ、ツツジ、イヌマキ、カシ、クヌギ、キンモクセイ、ゴヨウマツ、クロマツ、スモモ、カルミアなどです。

2023年11月23日 (木)

果実いろいろ

最近見た果実を少し掲載します。一部、植物園敷地内での撮影種も含まれます。

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花柄があるので、サラシナショウマの果実のようです。

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時々このような花穂がありました。開花が遅れて送粉者がいなくなったから?

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こちらはトリカブトの果実です。サラシナショウマと同じくキンポウゲ科なので果実も似た感じですね。11月下旬にまだ緑色です。果実が熟すまで寒さに耐えられるのだろうか?

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ホトトギスの仲間の果実です。ホトトギスの仲間は、比較的発芽率は高いと思いますが、開花に至るまで生育するものはそれほど多くないようです。

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フジタイゲキの果実です。フジタイゲキの果実は、かなり前に熟したものを見かけました。同じ株でも茎ごとに開花時期をずらし、少しでも多く生き残るための戦略でしょうか?

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ガマ属です。ガマ属の生育する場所は限られていますが、これは恐ろしい植物です。地下茎での栄養繁殖も盛んですが、この果穂から数えきれないほどの種子を飛散させます。植物園のビオトープに植栽した記憶はなく、飛来した種子か水利権を取得した水路から流入した種子によって、一二年の間に除去が大変なくらいに繁殖しました。

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ラン科植物(コアツモリソウ)の果実です。ラン科植物の果実は、どの種も数えきれないほどの種子を宿します。微細な種子には発芽のための養分が殆ど無いため、菌類(キノコ)から養分を貰って発芽します。しかも種ごとに栄養依存するキノコが異なるため、沢山の種子を飛散しても発芽に至るものは極めて少なく、その多くは絶滅危惧指定されています。


このところ、こちらのブログ更新が滞っておりました。雑用が多かっただけでなく、山野の植物探索をしていなかった事もあります。希少植物を主体に掲載していた前ブログと比べると、アクセス数がずっと少なくなりました。ちょっと寂しい気持ちもありますが、それで良かったと思っています。

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