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野生ラン

2024年11月21日 (木)

カヤランの成長

昨日は、一日雨が降っていました。それにしても寒かった・・。

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甲斐犬「竜と萌」が眠る林の上に顔を出している今朝の富士山は、御覧のように真っ白でした。

今日は天気が良さそうだったので、二回目の不法投棄監視パトロールに行ってきました。

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ある林道沿いに植えられている桜の木に、カヤランが着生していました。地域で見られる着生蘭の中では比較的出会うことの多い種ですが、目に留まると嬉しいものです。/span>


帰宅して、裏庭のツツジに着生しているカヤランを撮ってみました。

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小さなカヤランの苗が、びっしり着生しています。

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ピンボケが激しくなってしまいましたが、こちらはもっと成長したカヤランです。開花時期は、果実が裂開して飛散し始める頃・・3~5月となっていますが、すでに蕾が出来ています。段取りの良い植物ですね。

ところで・・。

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これが何だかお分かりでしょうか?種子発芽間もないカヤランです。右の写真で、通常見られるカヤランの葉と根が伸び始めているのが分かります。クモランも、発芽間もない頃にこのような幼体が見られます。

この幼体は、親株と同じ形態の葉が伸び始めると姿を消していきます。葉ではなく胚芽に由来するそうです。正式名称は分かりませんが、クモランの論文(谷亀高広博士)に葉状体と表現されていたので、私はどちらもそう呼んでいます。

シダ植物が胞子発芽して、前葉体から親株と同じ葉が出る過程を連想しました。植物の成長過程を観察するのも楽しいものです。

2024年11月16日 (土)

休憩時間に出会った野生ラン

14日は、ある施設のエビネ植栽エリアの除草作業を行ってきました。動かないでいると寒いので、昼食を食べてから付近の林内を探索してみました。

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探索したのは、スズタケや雑木の多いスギ・ヒノキの人工林です。

【ベニシュスラン】

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ベニシュスランが生えていました!日本のランハンドブックによると、生育するのは常緑または落葉広葉樹林の林床とありますが、静岡県東部ではスギ・ヒノキなどの針葉樹林で見られます。

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日本版ジュエルオーキッド(宝石蘭)と呼ばれる野生ランです。奇麗な斑でしょ?周辺を探すと点在していました。

諸先輩から「昔はたくさん花が咲いていたけど、無くなってしまった」と聞いた場所を注意深く調査してみると、実生苗のように小型化した個体が沢山見られました。共生菌への栄養依存度が高く、その状況が悪化すると、生き延びるために小型化して花を咲かせなくなるのかもしれません。自身が発見した別の自生地でもその兆候があり、年々開花株が減少しています。

ラン科シュスラン属ベニシュスラン(Goodyera biflora (Lindl.) Hook.f.)。

【ハクウンラン属】

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赤い果実はこの植物のものではありません。ウメモドキかな?

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こちらは、ハクウンランかヤクシマヒメアリドオシランと思われます。花を見ると違いは分かるのですが、葉だけではその自信がありません。見た目は似た植物ですが、その生態に少し違いがあると思っています。地域では、ヤクシマヒメアリドオシランの方が圧倒的に多く見られ、ハクウンランはかなり稀です。

ラン科ハクウンラン属(Odontochilus)。ハクウンラン(Odontochilus nakaianus)、ヤクシマヒメアリドオシラン(Odontochilus yakushimensis)。

【カヤラン】

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こちらは、強風で落下したと思われるカヤランです。
「個体を維持し続けるのでなく、有性生殖で世代交代しながら明るい場所に移動する繁殖戦略を取っている」と考えられているそうです。「大株になることの少ない」カヤランに比べて「しばしば大株になる」と解説されたヨウラクランも、比較的短期間に彼方此方に実生苗が出現し、いつの間にか親株が姿を消していくように思います。似た繁殖戦略を取っているのかもしれません。

ラン科カヤラン属カヤラン(Thrixspermum japonicum (Miq.) Rchb.f.)。


作業前、管理者さん宛に間伐などで消失の危機にある野生ランを移植して保護したい旨のお願い書を提出しました。そのリストの中に、ベニシュスランも含まれていました。それが、作業場所であるエビネエリアのすぐ近くに生えていたのです。なんか不思議な喜ばしい気持ちになりました。

2024年10月14日 (月)

本の紹介

2023年7月末に、【月間たくさんのふしぎ「植物」をやめた植物たち】という本の紹介をしました。その本は、発売早々に売り切れてしまいましたが「たくさんのふしぎ傑作集」として再版されることになりました。

「植物」をやめた植物・・ほとんどの植物は、光合成により成長に必要な養分を自分で作り出していますが、光合成をやめて菌類から100%養分をもらって生きている植物があります。地球上には約30万種の植物が生育していると言われていますが、そのうち約1,000種は光合成をやめた植物だそうです。

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出版予定日は2024年11月8日で、現在Amazonnなどで予約受付中です。価格は税込み1,430円です。単行本となり表紙も厚くなった(ハードカバー化された)ため、雑誌だった初版発売時とは価格が上がっています。

発行所は、株式会社福音館書店です。こちらの「これから出る本」のページからも購入できます。初版年月日は、2024年11月10日となっています。Amazonnと違っていますので、申し込みの際はご確認ください。

難しい分野ですが、児童向けという事もありイラストを交えてとても分かりやすく解説されています。一般の人がなかなか出会う事の出来ない珍しい植物達がいろいろ掲載されていて、植物観察を趣味としている大人にも非常に興味深い本だと思います。管理人にとっても、思い出深い写真が幾つか掲載されています。

2024年10月 3日 (木)

やっと見つけたクロヤツシロラン

例年なら、山間地のクロヤツシロランは、花も終盤になり果柄が驚くほど伸び始める頃です。ところが、それが見当たりません・・。

今日は、未耕作畑の草を刈った後で、別の山林を調べてみました。

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探索したのはこんなスギ林です。所々に野生動物の蒐場があります。念のため、長年一人探索の相棒を務めてくれた武道具の杖(つえでなくじょうと読んでください)を持っていきました。

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シックイタケの菌糸でしょうか?

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40分ほど探して見つかったのはこの一個体だけでした。昨年沢山見つかった倒木の脇は、全然見つかりませんでした。歳と共にセンサーの感度が鈍って来たのかも?

昨年よりも更に暑い日が続いたために、塊茎が腐ってしまったのか?それとも、まだ日中は30℃を超す様な日があるので花茎が伸びて来ないのだろうか?でも、やぶ蚊の多さは例年と変わりません。

2024年10月 1日 (火)

今年も遅いアキザキヤツシロラン

土・日は、町内のお祭りの準備や片づけがありました。幸い、当初の大雨予報が外れたおかげで無事に終了しました。諸々があって遅くなってしまった植物の調査に、昨日行って来ました。

依頼を受けたのは、アキザキヤツシロランの調査です。

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やぶ蚊に刺されながら孟宗竹林内に入ると、所々でこんな光景が目に留まりました。腐生ラン(菌従属栄養植物)に興味を持つ前は「気持ち悪い!」と感じるだけでした。腐生ランは、発芽から生育まで100%菌類に栄養依存しています。写真の菌がアキザキヤツシロランの共生菌かは分かりませんが、そうだとしたらこの林内での個体数が期待できます。

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彼方此方探して見つかったのはこの蕾だけでした。昨年も、初回の探索で発見したアキザキヤツシロランは数個体だけでした。その後、複数回訪れ例年(の見頃)より一月以上遅れていることが分かりました。今年はさらに遅いような印象を持って孟宗竹林を後にしました。

草刈のボランティアに参加している富士市沼川遊歩道沿いのヒガンバナも出現が遅れて心配でした。Webニュースで、埼玉県日高市の巾着田のヒガンバナも例年に比べて遅れていることを知りました。秋に咲く花は、気温の低下を感じて開花するそうです。アキザキヤツシロランも、猛暑のせいで地上部に姿を現すのが遅れているのではないかと思います。

2024年8月21日 (水)

ナギラン

今朝は6時前に家を出て、県中部某所へ行って来ました。やぶ蚊とクモの巣に悩まされながら歩いていると、ナギランが目に留まりました。

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一株、二株・・この植物を知らなければ、オオバノトンボソウと間違えたかもしれません。

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60cmくらいの範囲に、三株確認できました。

オオバノトンボソウより葉が固く葉柄が長いので、見慣れると花期以外でも区別出来るようになります。この植物に出会いたくて県中部の荒山を駆け巡ったことがあります。思い入れも植物の識別に役立っているようです。

この植物は静岡県において「伊豆、東部、中部、西部の記録があり、西部は各地にある。他地域は少ない。」とあります。私の住む東部では記録はあるものの未確認だったので、中部に足を延ばして初めて出会う事が出来ました。その一週間後、オオバノトンボソウが多くみられる東部某所で、花をつけたナギランに出会いました。希少植物との出会いはそんなものです。

ラン科植物は、光合成をしながらも菌類に栄養依存していることが知られています。また塵のような種子は養分を殆ど持たないため、発芽も菌類に栄養依存しています。ナギランは、立派な葉を持ち御覧のように新葉も伸びていますが、他のラン科植物に比べて菌への依存度が高く、暗い場所でも生育出来るそうです。ただ菌類が好みそうな湿潤な場所というより、乾燥気味の斜面で見ることが多いように思います。

早起きして県中部まで行った目的?それは秘密です。目的は無事達成でき、義母の笑顔を見て帰路につきました。

ラン科シュンラン属ナギラン(Cymbidium nagifolium Masam.)。

2024年7月30日 (火)

ムカデラン開花

ムカデランは、古い資料では静岡県東部・西部・北部の記録があります。環境が合えば大株になる種なので、新たな生育地が追記されているものと思われます。

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東部ではN先生の記録がありますが、花の接写が出来る場所ではありません。掲載写真は庭木に着生させたものです。

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とても小さな花ですが、見比べると萼片や花弁に変異があります。

「生育地は向陽地の樹幹や岩」とありますが、あまり陽当りが良すぎると葉が変色し次第に痛み枯れ死するように思います。南面に着生させたのに北面に長く伸びています。環境が合えば短期間に大きな株になるようです。


「山間の地では、集落全体が失われゆく照葉広葉樹林の代わりになっている」ことに注目した常葉大学の学生さんたちの調査に立ち会ったことがあります。集落の庭木などで出会った着生ランは、カヤラン、ヨウラクラン、クモラン、ムギラン、そして栽培品を着生させたフウラン、セッコクなども見られました。私はそれらの果実を見ていますが、ムカデランの果実はまだ見たことがありません。送粉者がいないのだろうか?あまりにも小さな花なので、人工授粉できるか分かりませんが挑戦してみようと思います。

2024年6月23日 (日)

タカネイチヨウラン

10年ほど前、ブログ記事に「亜高山帯高域に生育するイチヨウランは、低域に生育するものとは別種のようだ」と書きました。高域で見かける個体は、丈が短くて花が小さく俯き加減に咲きます。唇弁も白っぽく無班に近いものが多くて、とても弱々しい印象を持ったからです。

その記事を見た研究者の方から「他県でも同じようなことを言っている人がいた」と連絡がありました。2016年にその方の依頼を受け、複数回生育地を案内しました。

それから6年後の2022年に、以前からフィールドワークの手伝いをしてきた別の研究者からの依頼で、採集許可を取ってもらい低域と高域のイチヨウランを彼の元へ送りました。解析の結果、低域と高域では共生菌が異なるとの連絡がありました。そして、2024年5月にタカネイチヨウランの記載論文が送られてきました。

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低域に生育するイチヨウラン(Dactylostalix ringens)です。背萼片や側花弁が立ち上がっていて誇らしく咲いている印象の花です。萼片や花弁の基部に斑点があり、唇弁の斑紋も目立ちます。

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亜高山帯高域で、このピンボケ写真を撮った頃から、上のタイプとかなり違った印象を持っていました。

そして次が、最初の研究者と二度目の調査に行った時撮った写真です。

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過去にPergamina unifloraとして記載されたものは、Ylistでは現在イチヨウランのsynonymになっていますが、イチヨウラン(Dactylostalix ringens)ではない種として復活させたそうです。復活させた種はタイプ標本が沢山あったため(すべてが同じとは限らないため)、海外にも連絡を取って確認したとメールに書かれていました。大変な作業であっただろうと思いました。

亜高山帯高域で見られることから、タカネイチヨウランの和名が付けられました。長年気になっていた事が研究者により解明されて、とてもすっきりした気持ちです。ちょっぴり残念だったのは、この種が静岡県だけでなく他地域でも生育確認されていたことです。

ラン科イチヨウラン属タカネイチヨウラン(Dactylostalix uniflora)。

高域でも低域と同じようなタイプの見られるところもあります。交雑したのか、中間的な個体も確認されているようです。場所によっては、タカネイチヨウランばかりのところもありましたが、研究者のネットワークによる調査では、希少種であるイチヨウランよりも遥かに個体数が少ない超希少種である事が書かれています。

2024年5月20日 (月)

マルバウツギ

今日は、事前の予報よりずっと早く天気が回復して、もったいないような良い天気でした。打合せがあって出かけた先で、いろいろな人との繋がりが判明し、話が弾んで長居してしまいました。

家の周りでは、ヒメウツギの花が終わりマルバウツギが咲いています。萌の散歩道に咲くマルバウツギの花を見るたび、一緒に歩いた日々の事が偲ばれます。

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小雨降る中で撮ったため、こんな写真になってしまいました。
マルバウツギはウツギより葉が丸いこと、花糸に翼があって肩がなだらかなことなどの識別点があります。そして一番わかりやすいのが「花の中心部にオレンジ色の花盤が目立つ」ことです。

アジサイ科ウツギ属マルバウツギ(Deutzia scabra Thunb. var. scabra)。


昨日は、研究者より嬉しい知らせがありました。前ブログに「生育高度により別種のような印象を受ける」と書いた植物があります。その記事を見た別の研究者から「他県でも同様のことを言っていた人がいる」と聞き、静岡県内の生育地を案内しました。

それから数年後、別の目的で採取許可を取ってもらい生態サンプルを採取して研究者に送りました。そのサンプルで新たな発見があり「別種と考えられる」と連絡がありました。地域限定ならいいな・・という思いもありましたが、生育確認されたのは静岡県だけではありませんでした。長年の思いが実を結び、昨晩研究者から記載論文が送られてきました。微力なお手伝いですが、成果に結びつくと嬉しいものです。

植物名は、もう少し伏せておきます。

2024年5月 5日 (日)

コケイランと不明な植物(セリバヒエンソウ)

先日、ある場所の探索をしていてコケイランに出会いました。その後の予定もあり急ぎ足で探索しましたが、約百メートルの範囲で開花株が5株見つかりました。

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最初に見つけたのは、駐車した車の前でした。植物に興味のない嫁さんでは、指さしても気づかないかもしれません。

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こちらはスゲの生える湿地の近くです。葉が見当たりませんでした。近くに生えるサイハイランも花後に葉が枯れ、秋に新葉が姿を現します。開花株でも葉の枯れる時期に個体差があるようで、まだ青々したものもありました。同属のコハクランに比べて柔らかでシュロソウを思わせるような感じです。

静岡県内の諸先輩のWebページに掲載されているコケイランの花の唇弁は、上右の写真のように無地のものが多いと思います。ところが隣県の山で見た個体には紅紫色の斑点がありました。Wikipediaにも同様の解説がされています。

気になるのは、低山の個体は小川脇など湿り気の多い場所で見られますが、隣県の個体はススキの生える小さな山の上に生えていました。とても湿り気の多い場所というような感じではありません。もしかして変種?なんて思っています。

ラン科コケイラン属コケイラン(Oreorchis patens (Lindl.) Lindl.)。


次に行った場所で出会ったこの植物・・葉は見ていたかもしれませんが、花は初見だと思います。⇒セリバヒエンソウと教えていただきました。nohana様、有難うございました。原産地は中国で明治時代に渡来した帰化植物とありますが、研究者による逸出帰化との記述もあります。

キンポウゲ科デルフィニウム(オオヒエンソウ)属セリバヒエンソウ(Delphinium anthriscifolium Hance)。

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花には距があり、その外側には毛が生えています。少し明るい林縁に生えていました。この植物の名前がわかる方、教えてください(静岡県東部富士宮市にて撮影)。


一昨日は再生畑の未耕作エリアの草刈、今日は別の休耕畑の草刈と耕運機かけをやって来ました。休みながらゆっくりやればいいのですが、せかせかやるので流石に疲れました。性分なので仕方ありません。まだ残った作業があります。頭の痛いことです。

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