カヤランとクモラン
9月10日に地域の水口(水源)調査に行ってきました。その時、針葉樹林の林床でカヤランとクモランを見つけました。
強風によって着生していたスギの細枝とともに落下したようです。地域の人工林を歩くと、このように落下しているのを時々見かけます。そのままではやがて枯れ死してしまうと思われるので、持ち帰りました。
【カヤラン】
左が上のカヤランで、右は以前持ち帰ったカヤランです。着生していた枝ともにサザンカの幹に麻紐で固定してあります。
次は庭木に着生したカヤランです。最近、庭木の各所で見かけるようになりました。
こちらはツツジの枝に着生したカヤランです。準備の早い着生蘭で、もう来春咲く蕾が姿を現しています。
カヤランは着生する樹種が多様な種ですが、中でもツツジの枝は共生菌が豊富なようで沢山の苗が見られます。
過去のブログ記事でも掲載しましたが、この2枚の写真には発芽間もない状態のカヤランが見られます。扁平な器官で、葉緑素を持ち一見葉のように見えます。特に下の写真の右上に伸びている部位に注目してください。これは葉ではなく胚芽に由来する器官で普通葉が出現するとやがて姿を消していきます。
ラン科カヤラン属カヤラン(Thrixspermum japonicum (Miq.) Rchb.f.)。
【クモラン】
針葉樹の盆栽・・トウヒの寄せ植えに着生しているクモランです。自動自家受粉するようで、結実率は高く毎年右のように沢山の果実が見られます。
縦長の左側の写真(左に伸びる根の脇の部分)とこの写真(Xになっている部分)には、カヤランと同じような扁平な器官が写っています。こちらは葉緑素を持った着生根が成長すると姿を消していきます。
ラン科クモラン属クモラン(Taeniophyllum aphyllum Makino)。
ところで、Wikipediaによると、クモランに関して「着生場所から引き離した場合、絶対と言ってよいほど再活着しない」とあります。以前、研究者からの依頼で県中部に生育するクモランを採集しに行ったことがあります。そこは県東部で見るものより着生根が長く、別の個体の上に被さり合うように生えていました。根を傷めないで簡単に掴み取れました。前記のことが気になっていたので、一塊を苔の生えた桜の木に固定して毎日水遣りしたところ無事活着しました。この着生蘭は、長期乾燥によって根が枯れ死することが多いように感じています。着生根ですからスプレーでの水遣りも有効だと思います。枝に着生したままなら、冒頭のカヤランのようにして根が動き始めるまでマメにスプレーすれば、活着の可能性は高いと思います。
この二種類の着生蘭は、他種に比べて樹種を選ばず発芽しやすいようですが、長く観察しているといつの間にか姿を消してしまうことがあり、場所を移動しながら代を繋げているというような印象を持ちました。このことは日本の蘭ハンドブック「カヤラン」の解説でも触れられています。同じく発芽率の高いヨウラクランも同様に感じています。庭木の着生蘭観察も興味深く楽しいです。
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