« 2025年8月 | トップページ | 2025年10月 »

2025年9月

2025年9月19日 (金)

カヤランとクモラン

9月10日に地域の水口(水源)調査に行ってきました。その時、針葉樹林の林床でカヤランとクモランを見つけました。

Ap9100124

強風によって着生していたスギの細枝とともに落下したようです。地域の人工林を歩くと、このように落下しているのを時々見かけます。そのままではやがて枯れ死してしまうと思われるので、持ち帰りました。

【カヤラン】

Ap9140031Ap9140034

左が上のカヤランで、右は以前持ち帰ったカヤランです。着生していた枝ともにサザンカの幹に麻紐で固定してあります。

次は庭木に着生したカヤランです。最近、庭木の各所で見かけるようになりました。

Ap9150062

こちらはツツジの枝に着生したカヤランです。準備の早い着生蘭で、もう来春咲く蕾が姿を現しています。

Ap9150077Ap9150071

カヤランは着生する樹種が多様な種ですが、中でもツツジの枝は共生菌が豊富なようで沢山の苗が見られます。

Ap9150078

Ap9150073

過去のブログ記事でも掲載しましたが、この2枚の写真には発芽間もない状態のカヤランが見られます。扁平な器官で、葉緑素を持ち一見葉のように見えます。特に下の写真の右上に伸びている部位に注目してください。これは葉ではなく胚芽に由来する器官で普通葉が出現するとやがて姿を消していきます。

ラン科カヤラン属カヤラン(Thrixspermum japonicum (Miq.) Rchb.f.)。

【クモラン】

Ap9150092Ap9150091

針葉樹の盆栽・・トウヒの寄せ植えに着生しているクモランです。自動自家受粉するようで、結実率は高く毎年右のように沢山の果実が見られます。

Ap9150094

縦長の左側の写真(左に伸びる根の脇の部分)とこの写真(Xになっている部分)には、カヤランと同じような扁平な器官が写っています。こちらは葉緑素を持った着生根が成長すると姿を消していきます。

ラン科クモラン属クモラン(Taeniophyllum aphyllum Makino)。


ところで、Wikipediaによると、クモランに関して「着生場所から引き離した場合、絶対と言ってよいほど再活着しない」とあります。以前、研究者からの依頼で県中部に生育するクモランを採集しに行ったことがあります。そこは県東部で見るものより着生根が長く、別の個体の上に被さり合うように生えていました。根を傷めないで簡単に掴み取れました。前記のことが気になっていたので、一塊を苔の生えた桜の木に固定して毎日水遣りしたところ無事活着しました。この着生蘭は、長期乾燥によって根が枯れ死することが多いように感じています。着生根ですからスプレーでの水遣りも有効だと思います。枝に着生したままなら、冒頭のカヤランのようにして根が動き始めるまでマメにスプレーすれば、活着の可能性は高いと思います。

この二種類の着生蘭は、他種に比べて樹種を選ばず発芽しやすいようですが、長く観察しているといつの間にか姿を消してしまうことがあり、場所を移動しながら代を繋げているというような印象を持ちました。このことは日本の蘭ハンドブック「カヤラン」の解説でも触れられています。同じく発芽率の高いヨウラクランも同様に感じています。庭木の着生蘭観察も興味深く楽しいです。

2025年9月17日 (水)

ヒガンバナと十日後のシュスラン

NPOからの依頼で、ヒガンバナの花が咲き出す前に、富士市の下界を流れる沼川沿い遊歩道の草刈りをして来ました。今年は連絡がないので心配していたら、もう山間の地でも花が咲き始めました。NPOの役員と途中から参加してくれたジヤトコさんだけで刈ったのだろうか?長年参加してきた市民メンバーは、数人だけ残りみんな年寄りになってしまいました。

Ap9160059Ap9160054

Ap9160057

こちらは一足先に咲いたキツネノカミソリです。同科同属ですが、キツネノカミソリの果実が膨らみ始めた頃、ヒガンバナの花が咲き出します。

Ap9160047Ap9160048

十日後のシュスランの花です。花茎の先端部まで咲いていました(控えめな性質なので、あまり開きませんが・・)。

Ap9160051

上手く根付くか分からないので、緊急避難したのは一株だけでした。花茎から少し離れた場所に見える小さな株は、親株から伸びた栄養繁殖苗です。この苗は地上部が残ったまま冬を越しますが、花茎部は枯れて地下茎だけ残ります。今のところ、この場所の環境は適しているようです。


最終的には、環境の変化により小型化してしまった地域某所のベニシュスランを少し移植して、花を咲かせたいと思っています。それが、少し前に不法投棄監視パトロールで通りかかったところ、作業道の草刈りがされていました。すでに自生地の間伐作業がされてしまったかもしれません。近々確認してこようと思っています。

植物保護の考え方や方法は人それぞれです。諸先輩の多くは「自然のままに!」というご意見を持たれていると思います。でもそれでは守れない植物を幾度も目にして来ました。情報拡散による園芸採取はもちろんですが、野生動物の食害や、草刈り・笹刈りがされなくなったために姿を消してしまった希少種もあります。ただ、個人レベルで保護できる植物はホンの少しで、傍から見れば単なる自己満足と言われるかもしれません。それでも何もしないより良いと最近思うようになりました。

2025年9月 5日 (金)

シュスランの花

日々行動範囲が狭くなってきた為、こちらのブログの更新が滞り気味になってしまい、訪問者の皆様にはご迷惑をおかけしております。

Ap9040027Ap9040022

Ap9040026Ap9040023

以前掲載したシュスランが咲き始めました。このシュスランは「緊急避難」という名目である場所から移植しました。諸先輩のWebページや図鑑などには「照葉樹林や落葉樹林下に生育」とありますが、針葉樹の人工林が大半を占める静岡県東部においては、ベニシュスランとともにスギ・ヒノキの林床で見かける場合が殆どです。

Ap9040029

花は紅を帯びた白色であまり開きません。

ラン科シュスラン属シュスラン(Goodyera velutina Maxim.)。


私の限られた探索範囲では、シュスランよりもベニシュスランに出会うことが多く、Webページの記述と逆の印象を持っていました。ベニシュスランに関しては、幾度か生育地を訪問している内にシュスラン属の中でも一番気難しい植物ではないかと思うようになりました。

現在、各所で人工林の間伐や皆伐が行われています。森林組合さんなどにお願いして気を使ってもらっても、林床の光条件が変わることによって共生菌の繁殖環境が変化し、個体は小型化して花を咲かせなくなります(素人の私見です)。その保護には移植も視野に入れる必要がありますが、群生することもある割に気難しい植物なので、安定して生育できる条件を模索する必要があります。

以前、腐生ランを栽培する実生床と同じ考えに基づきプラ容器で実験してみました。実験は上手く行きましたが、小さな容器なので共生菌の状態を長く保つことは困難です。そこで、移植したこのシュスランに注目してきました。上手く花を咲かせてくれれば、移植して保護する目標も明るいものになります。ただ、移植により保護できる個体数は微々たるものですが・・。

« 2025年8月 | トップページ | 2025年10月 »