ホソバショリマの調査と保護
この場所でホソバショリマを発見したのは、今年6月上旬の事でした。それから約3ヶ月後の9月中旬に様子見に行って来ました。
ススキやカヤツリグサの仲間が繁茂していたので、大きなものだけ管理者の方に断って鎌で刈り取りました。
発見当初とかなり違った印象を受けました。若草色でとても奇麗だった葉が変色し始めていました。例年にない暑さのせいか、或いは水不足によるものなのか不明です。
上の群落の隣にも・・。この場所以外にも、2ヶ所の群落を発見しました。その中には日光を遮る大きな樹木の林床もありました。生育範囲はある程度広いですが、丈が短く掲載した写真の場所のように密集しておりませんでした。定期的な観察を続け、状況によっては移植も視野に入れる必要があると思います。
この角度から見ただけでは、周辺で沢山見られるヒメシダ属と区別がつきません。
葉身下部を確認すると・・。
このように、小さな耳状の羽片があります。最初に発見された杉野孝雄先生のお手紙には下部の羽片が縮小する「ニッコウシダ」と思ったがどうも違うようなので、京都大学の田川基二先生に同定をしていただきホソバショリマと判明したとあります。
そして「ホソバショリマは現在でも本州では稀で、東限(科博では北限と表現)自生地なので大切に出来ればと思います。」と締めくくられていました。
杉野先生が本州で最初に発見されたのは、今から70年くらい前になるそうです。このシダ植物は根茎が長く匍匐し群落を形成しますが、生育地がごく限られていて、発見後姿を消してしまった場所もあると聞きました。常緑とされているそうですが、静岡県東部では冬に地上部が枯れます。しかも、他のヒメシダ属に比べて遅く姿を現します。本来の生育地であるとされる熱帯山地林の個体に比べてかなり厳しい環境で生育していることになります。
この希少な植物を保護するためには、この地での生育サイクルを把握することから始める必要があります。同じ地域のあちこちで見つからない事から、胞子による発芽もかなり限定された条件があると考えられます。管理者の方の承諾を得て、観察用に少し生体サンプルをいただき栽培を始めています。地上部の枯れる頃に連絡をいただき、混生するササ刈のお手伝いをすることにしました。
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