キツリフネ
キツリフネの花を初めて見たのは、富士山南面の1,400m辺りでした。そのため下界で見たツリフネソウより開花が遅いと思っていました。その後、高度300~400mでキツリフネと出会い同じ高度ではツリフネソウより開花が早いことを知りました。
畑と植物園の作業ばかりしている内に、富士山は山開きして山野では様々な花が咲き乱れています。高度400mくらいに咲いていたキツリフネを撮ってみました。
ツリフネソウ属の花は面白い形をしています。蜜が距の中に溜まるため嘴の長い昆虫でないと蜜を吸う事が出来ません。送粉者はトラマルハナバチだそうで、花の中に頭を突っ込んで蜜を吸うため効率的な受粉が行えるとあります。
蕾も面白いですね。
こちらは果実のようです。ツリフネソウ属は一年草です。種子散布する前に刈り取られてしまうと、絶えてしまいます。道路脇で見かけたピンクのツリフネソウは、残念ながら姿を消してしまいました。
ツリフネソウ科ツリフネソウ属キツリフネ(Impatiens noli-tangere L.)。別名をホラガイソウというそうです。こちらの方がイメージが湧きやすい感じがします。
キツリフネの方が開花時期が早いと書きましたが、最速最遅の花同士で交雑することはないのだろうか?Ylistには、沢山のツリフネソウ属とその品種が掲載されていますが、Impatiens noli-tangere×Impatiens textoriiは見当たりません。
Web検索すると、「ツリフネソウ-キツリフネにおける異種花粉の受粉における繁殖成功度の低下」という論文が見つかりました。長野県安曇野市では、ツリフネソウとキツリフネの分布と開花時期が重なっているそうです。両種とも送粉者はトラマルハナバチですから、種間送粉が行われます。ところが「異種花粉が混入した場合結果率(花が果実になる割合)が大幅に減少し、同種花粉が先に受粉してもその後異種花粉が受粉すると結果率が低下する」とあり、交雑するとは書かれておりません。
交雑種を期待していましたが、それは望めないようです。同属なのにどうして交雑種が出来ないのでしょう?分布や開花時期が重なる種を守るための進化の一例と言えるようです。植物の生き残り戦略は、多様で興味深いですね。
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やまぶどうさん、こんばんは。
私は以前はやまぶどうさんのブログを辞書替りにしていて、やまぶどうさんの深い考察には
ついていけませんでした。(すみません)
しかし、私も徐々にですが経験を重ね、やまぶどうさんの物の見方、切り口自体が大変面白いものだということに最近分かりました。
ツリフネソウとキツリフネの交雑が起こらない仕組み、面白いですね。
特に外来種は在来種と交雑しやすかったりしますし、スミレも交雑が多いですよね。
残念ながら私の近隣の山ではキツリフネもツリフネソウも消えつつあります。
私の居住地ではキツリフネは早いもので6月に咲き、
8月後半辺りからはキツリフネとツリフネソウが
山の林床を埋め尽くしていました。かつては。
雑草みたいな存在だったツリフネソウが今では希少種です。
私はスミレが好きなので、交雑種を見つけると大変嬉しいですが、
キツリフネ達のように自分の種を守り続ける生き方も好きです。
今日も為になりました^^
ありがとうございます。
投稿: ゆみ | 2024年7月26日 (金) 21時54分
ゆみさん、お早うございます。
私は独り歩きが多かったため、植物の名前を幅広く知りません。
それに最近では見知っていてもすぐに名前の出てこないことがあります。
そんなことから植物の生態に目を向けるようになったのです。
スミレはファンが多いですね。
研究者に頼まれて、一昨年富士山南麓である植物の調査をしました。
その時、エイザンスミレとナガバノシミレサイシンの交雑と思われる個体を複数込みつけました。
目印にスズタケを挿しておいたところ、今年も無事が確認できました。
スミレは交雑種が多いと聞きましたが、交雑しない種同士もあるのではないかと思っています。
富士宮市に生育するキスミレ群落を見てそんなことを考えました。
投稿: やまぶどう | 2024年7月27日 (土) 06時25分
やまぶどうさん、おはようございます!
やまぶどうさんの植物の知識が浅いというのなら、私は一体どうなるのでしょう(@@;)
私は登山から花を好きになったので、花を見ながらの登山と、場所を絞っての精査が好きです。
特に春はスミレ観察で終わりますが、スミレの場合は徹底精査で他の花が目に入ってきません^^;
2年前より某植物の会に入会しましたが、体調不良が続き去年まではほとんど出席出来ず、
今年は今のところ毎回出席出来ています。
しかし今年の方針が保全=草むしりメインとなりまして、今はただ草むしりのプロとして邁進しております。
私は関東の北寄り在住ですが、今年キスミレが見たくて山梨の山を訪れましたが既に終わっていました。
(割と詰めが甘いところがあります)
来年こそはキスミレや太平洋側にしかないスミレも見たいなと思っています。
ナガバノスミレサイシンとエイザンの交雑種ですか!
それは聞いたことがありません。
よくよく考えると黄色いスミレの交雑種は私も聞いたことがないです。
交雑も蟻さんのおかげだと思いますが、どうなんでしょう。
ネットでしか見たことないですがキスミレは割と群生しやすい印象ですが、
キスミレの周りには他の種類のスミレさんが居られないのでしょうか?
今年近隣の亜高山でシロスミレの群生を見ました。
多分千株はありましたが、他のスミレはあまり目に入ってこなかったです。
群生しやすいスミレさんは他の種を駆逐する傾向があるのでしょうか。
自分で書きながら面白い現象だなと思いました^^
投稿: ゆみ | 2024年7月27日 (土) 11時21分
ゆみさん、お早ようございます。
キスミレは、静岡県で複数個所の生育地が記録されていますが、私は焼津市の高草山と富士宮市の朝霧で見ています。朝霧では、タチツボスミレと混生しています。いずれも群生していますが、結構気難しい種のようです。エイザンとナガバノスミレサイスンの交雑と思われる個体は、スミレ好きの友人にも見てもらいました。この場所には、ヒナスミレとタチツボスミレも見られます。群生する種は、他の種の花粉を受け付けないのかもしれませんね。
投稿: やまぶどう | 2024年7月28日 (日) 06時59分
やまぶどうさん、おはようございます。
暑くて頭が働かない日が続いておりました。
やまぶどうさんのお住まいはどうですか?
キスミレ、来年の課題にします。
スミレは地域差があるので一つの場所を知るだけではスミレの性質を正しく理解するのは難しいですね。
(他のお花もそうだと思います)
エイザンとナガバノスミレサイシンの交雑種は未見なので興味ありありです。
多くの交雑種を知っているわけではありませんが、その花にいつか会えるように頑張って練り歩きたいと思ってます^^
言い忘れましたが、私も基本単独が好きです^^
投稿: ゆみ | 2024年8月 1日 (木) 06時07分
ゆみさん、お早うございます。
こちらは異常な暑さの上に雨が降らないので、野菜がうまく育ちません。
うっかりしていると、庭の鉢植えもあっという間に萎れてしまいます。
スミレが好きな花追い人は多く、みんなとても詳しいので驚きます。
スミレに苦手意識を持ったのは、種類の多さと識者の多さかもしれません。
初見で一番嬉しかったのは、隣県で出会ったアケボノスミレでした。
純白のスミレも好きです。
シロバナヒナスミレ、シロバナタチツボスミレなど・・。
シロバナヒナスミレの話をしたら地域の識者の先生から「白花はあり得ない」と言われました。
サンプルを大阪のスミレの会へ送って、間違いない事を鑑定してもらったことがあります。
投稿: やまぶどう | 2024年8月 2日 (金) 05時57分