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2024年3月

2024年3月28日 (木)

キブシの花

不法投棄監視パトロールに行った林道で、キブシの花などを撮ってみました。引きこもりのような生活を続けているうちに、春爛漫の季節になっていました。

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キブシは雌雄異株です。「雄花より雌花の方が短い」と図鑑の解説にあります。この写真ではちょっと比較しにくいですが、左が雄花で右が雌花です。

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こちらが雄花です。黄色い葯が見えています。

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こちらが雌花です。雄蕊が退化して緑色の柱頭が目立っています。

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花弁を外してみました。退化した雄蕊は花柱の1/3くらいの長さしかありません。

幾つか観察してみると、花序の長さには個体差がありますので、雌雄の区別は花の中を覗いてみるのが一番だと思います。

雌雄異株の植物は、自家受粉が避けられるため、多様な遺伝子を持った子孫が残せる利点があります。同時に、近くに両種がないと種子が出来ないので子孫が増やせない欠点もあります。この場所には、雄木と雌木が混在していました。どういうシステムで、実生苗が雄と雌の木になるのか知りたいものです。

キブシ科キブシ属キブシ(Stachyurus praecox Siebold et Zucc.)。

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林道から見た下界の様子です。中央右に見える山裾には富士川が流れています。ここは、ササユリの保護区から見える愛鷹山系某所になります。「そんな所に不法投棄物なんかあるのか?」・・あるのです。投棄されたものの大半は、分別してゴミ回収に出せるようなものです。わざわざ山中に持ってきて捨てる人の気持ちが理解できません。

2024年3月24日 (日)

カヤランの苗再び

ツツジの枝に生えてきたカヤランの実生苗を、追跡観察してみました。

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当初は、クモランの葉状体(仮称)かと思っていたカヤランの発芽間もない姿です。

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こちらは、葉状体の端部から普通葉が出ています。

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左には普通葉が2枚見えます。普通葉だけが2~3枚の個体を見かけますので、そのくらいまで成長すると葉状体は姿を消すようです。クモランでいえば、葉緑素を持った着生根が伸びた頃に姿を消していきます。発芽間もない苗の栄養補助器官のようなものだと思います。

右はカヤランの果実です。一般的なラン科植物の果実と違い、果皮の片側だけが裂開します。種子が飛散するころに、蕾を見ることが出来ます。沢山のカヤランの苗を見て、森町の古民家で見たフウランの実生苗を思い出しました。イヌマキの枝にびっしり生えていました。そういえば果実や種子の形態が似ています。毛糸の繊維のような種子は、風で飛ばされ樹皮に留まりやすいようです。

ラン科カヤラン属カヤラン(Thrixspermum japonicum (Miq.) Rchb.f.)。

ヨウラクランの苗

山間の地にある我が家の庭木では、いろいろな着生ランを見ることが出来ます。種子発芽からどのように成長していくのか、観察してみたいと思っていました。

イヌマキの枝に着生していたヨウラクランの実生苗を撮ってみました。接写用のコンデジを使いましたが、あまりに小さいのでピンボケになってしまいました。

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こちらの苗は、スケールで測ってみると葉幅が1mmに満たないとても小さなものです。

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こちらが、今回見つかった一番小さな発芽苗です。上に写っているのはセッコクの着生根で、直径1mm程度です。苗がいかに小さいか分かると思います。

ラン科は単子葉植物です。一枚葉の苗を探していますが、まだ発見できません。

ラン科ヨウラクラン属ヨウラクラン(Oberonia japonica (Maxim.) Makino)。


着生ランの根は、水分や養分を吸収・貯蔵する特殊な構造をしているそうです。でも、乾燥により枯れてしまう実生苗も多いと思います。枝に着生する個体は枝の上側ではなく、下側についているものが殆どです。

あるWebページに、温帯から亜寒帯に生育するラン科植物の種子は、完熟すると休眠に入り冬の寒さを経験させないと休眠から覚めない・・というようなことが書かれていました。地域に生育する着生ランは、今頃果皮が裂開し種子を飛散させるものがあります。種子を飛散させる時期によって、例外もあるのではないでしょうか?

2024年3月14日 (木)

姿を消したコクラン

再生畑の隣に、スギ・ヒノキの混合林があります。林床にはコクランが生えていました。様子を見に行くと、姿が見えません。どうしたのだろう?

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上部を何ものかに食べられていました!

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こちらはオオバコのようです。最初はシカかと思ったのですが、他の食痕や足跡からもウサギではないかと思われます。

以前撮った写真ですが・・。

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コクランは、クモキリソウ属(Liparis)とされていて、同属他種は冬に地上部の枯れるものが多いですが、基本的には冬に地上部(葉)が枯れません。

先生から「日本で生育が確認されたラン科植物」の一覧表をあずかり、新記載種やDNA情報の解析により、属名(学名)の変更になったものを追記・訂正しています。少し前までは、コクランは上記のようにクモキリソウ属(Liparis)とされていましたが、最新のYlistでは、下記の二つの学名が標準として記載されていて、従来の学名Liparis nervosa (Thunb.) Lindlは、synonymとなっています。

Empusa nervosa (Thunb.) T.C.Hsu:文献情報(原記載文献など): Orchadian 15: 40 (2005).
Diteilis nervosa (Thunb.) M.A.Clem. et D.L.Jones:文献情報(原記載文献など): in T.C.Hsu & S.W.Chung, Ill. Fl. Taiwan 2: 18 (2016).

2023年4月11日付けの編集によるYlistでは、他の種でも標準学名が2種類記載されたものがあります。これはどうしてでしょう?

2024年3月12日 (火)

ヒイラギナンテン

雨続きや用事が重なって慌ただしい日が続いて、また更新が滞ってしまいました。家族には「ボケなくていい」と言われています。

地域のスギやヒノキ林の中を探索すると、ヒイラギナンテンをよく見かけます。ヒイラギナンテンは、江戸時代に中国から渡来したそうです。

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葉がヒイラギに似ています。触ってみるとヒイラギほど痛くありません。全体の姿がナンテンに似ていることと併せてヒイラギナンテンの和名がつけられたそうです。どちらも魔除けなどの縁起木とされる植物ですから、2倍縁起のいい植物ということになります。

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萼片9枚、花弁6枚・・どちらも黄色なので全体が花弁のように見えるとあります。萼片は大小があるようです。

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薄暗い林床に生育していることが多い割には、結実率が高いので自動自家受粉するのかと思っていました。「昆虫などが雄しべに触れると刺激で内側に動いて受粉する」そうです。直接雄しべに触れないと動かない(受粉しない)のだろうか?今度確かめてみよう!

メギ科メギ属ヒイラギナンテン(Berberis japonica (Thunb.) R.Br.)。

帰化植物なのに、学名が「japonica」となっているのはどうして?

2024年3月 1日 (金)

ミツマタの花

29日は、委嘱を受けている不法投棄監視パトロールに行ってきました。ポイ捨てゴミばかり見ていると嫌になるので、時々近くの林内を覗いたりしています。

保管庫で眠っていた古い高倍率コンデジで、ミツマタの花を撮ってみました。手振れピンボケ写真ばかり・・カメラのせいです(笑)。

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ここは、テンナンショウ属の調査を依頼されたとき偶然見つけました。林床にはヤマルリソウやアケボノソウなども生えています。この日は、近くでウグイスが鳴いていました。人と出会うこともないので、のんびり自然と触れあえます。

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再生畑ではミツマタの花が咲いていましたが、この場所は比較的高所にあるので開花は少し遅くなります。

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よく見ると、咲き始めたものもありました!

ミツマタの花は花弁がなく、萼筒の先端が4裂して花弁のように見えます。花の形態はかなり違いますが、カンアオイ属と同じですね。

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枝が三つに分かれるのでミツマタの和名がつけられました。でも、二つ又やこのように四つ又になることも稀にあります。図鑑の解説と違うところを探していると、いろいろなことに気づくようになって植物観察が更に楽しくなります。

ミツマタは、中国、ヒマラヤ、東南アジア原産の帰化植物です。日本へは安土桃山時代~江戸時代頃渡来したとあります。富士山周辺では、栽培地の名残と思われる群落を見ることもあります。

ジンチョウゲ科ミツマタ属ミツマタ(Edgeworthia chrysantha Lindl.)。

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