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2024年2月

2024年2月24日 (土)

カヤランの実生苗

家族が休みの日は、できるだけ外出しないで家にいます。ところが、今日は見捨てられ一人ぼっちでした。PC作業に飽きたので、萌がいたら・・なんて思いながら、裏庭植物園を眺めて歩きました。

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カヤランの着生していたツツジの枝を見ると、前回見逃した枝に沢山の実生苗が生えていました。

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左は上右の枝を少し角度を変えて接写しました。そして、この枝の裏側を見たのが右の写真です。あれっ?クモランの発芽初期に見られる葉状体(仮称)のようだ!

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こちらの枝にも、同じようなものが見えています。これはカヤランだろうか?さらに右のマメヅタの赤ちゃんのようなものは?

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この写真をよく見ると、片方(写真の上側)は葉状体のような形態で、もう片方は先端が尖ったカヤランの成長した株と同じ形態の葉が見えています。葉状体のようなものはクモランではなくカヤランの発芽間もない姿のようです。これも、クモランと同じく葉ではなく胚芽に由来する(発芽苗の茎のような)部分で、普通葉が成長し根が伸びるとともに姿を消していくのではないかと思います。

掲載した写真で発芽したてに一番近いのは、マメヅタの赤ちゃんのような上右の写真のようです。クモラン同様、庭木に着生していたからこそ気付いたことです。今後は、この葉状体のようなものの変化を観察していくつもりです。

成長が遅く・・と書かれたWebページもありますが、盆栽や庭木に着生しているヨウラクランやカヤランは、ラン科植物にしては開花に至るのが速い方だと思っています。

ラン科カヤラン属カヤラン(Thrixspermum japonicum (Miq.) Rchb.f.)。

2024年2月18日 (日)

ヒメフタバラン(県東部)

この野生ランに初めて出会ったのは、十数年前の五月連休でした。同じくらいの標高にも見られるアオフタバランや、亜高山帯に生育する種は初夏以降に咲くのに、もう花柄子房の膨らみ始めたものもありました。発見時点では、種名が分かりませんでした。

数年後に別の場所でも見つけましたが、いずれも個体数は少なく極狭い範囲でしか見られませんでした。県西部で大群落に出会うまではそういう種だと思っていました。

一番高度の低いところでは、そろそろ姿を現しているかもしれないと思い、様子見に行ってきました。

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冬に地上部は枯れますが、新たな葉が展開していました。右には蕾を持った個体が見えています。

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ヒメフタバランは、地下茎で栄養繁殖もします。掘ってみないと分かりませんが、こちらは栄養繁殖苗かな?

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花期は、3~5月とあります。この場所では、3月に花が見られるかもしれません。ヒメフタバランは、光合成をしながら主としてロウタケ科の菌類にも栄養依存しているそうです。ロウタケ科というとキンランやササバギンランなどの菌根菌としても挙げられています。

ラン科サカネラン属ヒメフタバラン(Neottia japonica (Blume) Szlach.)。フタバラン属(Listera)はDNA情報による解析の結果サカネラン属(Neottia)に改められました。

オオフタバラン(Makino 1893)の別名もあります。この場所の個体はそれほど大きくありませんが、30cmくらいになるものもあるようです。フタバラン類の中では大型に属する事から牧野博士によって命名されたようです。

2024年2月 6日 (火)

ヨウラクラン

この野生ランに初めて出会ったのは、庭の八重枝垂桜の樹幹でした。その後鎮守の森のアカシデやタブノキでも見ることが出来ました。

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地域で見る着生ランの中では、成長が早い方だと思います。

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左は、何が原因なのか昨年の花後に枯れてしまいました。それまでは、とても元気そうでしたが・・。ヨウラクランを見た一番高い高度は約1,000mくらいの場所で、樹上に沢山着生していました。そこでも、いつの間にかすべて枯れてしまいました。

右はツツジの幹で見付けた菌糸です。生きた木の樹皮に、このような菌糸を見るのは稀です。着生ランの共生菌が、このような目視できる菌類なら面白いのですが・・。

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比較的日照がいい場所だと、葉が黄色みを帯びていることがあります。

ヨウラクランは、数えきれないほど沢山の花をつけますが、私が見てきた範囲で結実するものは極稀です。でも、あちこちに苗が姿を現しています。隣に着生しているムギランは、結実率は高いようですが苗を見ることは稀です。ただ栄養繁殖で驚くような大株になります。

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イヌマキの枝に生えてきたヨウラクランです。沢山見える着生根はセッコクです。

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こちらは、シダ植物のシシランの鉢植えです。シダ植物は彼方此方で見かける種でも、栽培するのに気難しい一面があると思っています。植物園導入のために鉢植えで2年ほど栽培・観察しています。その株元に出現したヨウラクランです。手前のシラガゴケと比べて小さいことが分かると思います。ラン科植物は、単子葉植物です。発芽したての一枚葉の個体を見たいと思っているのですが、まだ見つけられません。

2024年2月 1日 (木)

作業道に生育していたセリバオウレン

2022年早春、セリバオウレンの開花を確認したと森林管理の担当者からメールをもらいました。そこは自身が把握していなかった場所で、間伐材の搬出道で分断され、生育エリアには不要枝が積まれていました。

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業者さんが重機でこの場所へ移動してくれた不要枝の山です。重機を使ったとはいえ、大変な作業だったと思います。

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間伐して林床の日当たりが良くなり心配な部分もありましたが、みんな元気そうなので安心しました。右の小さな葉は実生苗です。

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葉を除けてみると、頭を擡げ始めた花茎がありました。

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咲いているものもありました。ピンボケ写真ですが・・。
セリバオウレンは、雌雄異株となっています。そして雄花、雌花、両性花があります。両性花の雄蕊や雌蕊の数は、個体ごとに様々です。この花は雌蕊が見えませんので雄花(雄株)のようです。

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花の一番外側にある花弁のような部分は萼片です。このように紫褐色の花も見受けられます。花弁はその内側にあり、スプーンのような形をしています。

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こちらにはたくさんの雌蕊と少しの雄蕊があります。両性花ということになります。

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葉の形も様々です。

キンポウゲ科オウレン属セリバオウレン(Coptis japonica (Thunb.) Makino var. major (Miq.) Satake)。


別の希少植物保護に関して、研究者からアドバイスをもらいました。その文末に「全国的に伐期を迎えた森が多いので、商業的な林業施業と保全の狭間で難しい問題です」とありました。確かにその通りだと思います。花追い人の中には、間伐や皆伐で環境の変わっていく林床を目にして、林業業者に矛先を向ける人もいます。でも、先方からすれば林床の草本は単なる雑草です。

数年前、ある森林組合宛てに嘆願書を書き、間伐対象エリアの植物保護のお願いに行きました。不安な気持ちを抱きながら事務所で打ち合わせをしましたが、文句も言わずに私の説明を聞いてくれたうえに、可能な限りの配慮をしてくれました。現地説明の折、その担当者は嘆願書に記した植物をWeb検索し、その希少なことも理解して立ち会ってくれました。本当に感謝しかありません。

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