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2022年11月

2022年11月30日 (水)

キリシマギンリョウソウ(静岡県)

キリシマギンリョウソウの記載論文とリリース資料が、発表前(11月17日)に研究者から送られて来ました。新聞は11月30日の朝刊解禁、そして放送・Webは0時解禁となりますので、本ブログに掲載いたします。

2020年版の静岡県植物目録には、ベニバナギンリョウソウ(Monotropastrum humile (D.Don) H.Hara f. roseum (Honda) Yonek.)が掲載されています。地域の識者の間では、それが二段目以降の写真に掲載したタイプとして認識されていると思います。

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ところが、ベニバナギンリョウソウは、新潟県で採取されたタイプ標本を元に品種記載されたもので、上の写真のようなギンリョウソウの(子房部がピンク色の)色変わり品だそうです(研究者により、タイプ標本がこの形態である事が確認されています)。

ツツジ科ギンリョウソウ属ベニバナギンリョウソウ(Monotropastrum humile (D.Don) H.Hara f. roseum (Honda) Yonek.)。

そして、こちらは静岡県某所で撮影したギンリョウソウ属です。

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上のギンリョウソウとは形態が異なっています。また、この近くに生育している一般的に見られるギンリョウソウは、既に子房が膨らみ始めていました。

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世間では、このように花被片まで赤味を帯びる個体が、ベニバナギンリョウソウと呼ばれており、Webでベニバナギンリョウソウを検索すると、このタイプの画像が表示されます。

ところが、品種記載されたギンリョウソウの色変わりであるベニバナギンリョウソウ(最上段の写真)とは、花期が異なる事、地上部だけでなく地下の形態も異なる事、菌根菌が異なる事、そして新しい解析手法により遺伝的にも区別出来る事が分かったため、このタイプを別種として記載したそうです。

タイプ標本は、鹿児島県霧島市で採取されましたが、研究者の調査ネットワークで四国、近畿、中部地方にも分布している事が分かったそうです。静岡県でも生育が確認された事から、このブログに掲載しました。

ツツジ科ギンリョウソウ属キリシマギンリョウソウ(Monotropastrum kirishimense)。

※静岡県内で、このタイプのギンリョウソウ属を見かけた方、情報をいただけると有り難いです。いただいた位置情報などは、研究者以外へ提供する事はありません。

連絡先アドレス:yamabudou@hotmail.com


詳しくは、下記Webページをご覧ください。

神戸大学研究ニュース

2022年11月29日 (火)

静岡県東部のナチシダ

富士市域西部で生育確認したナチシダを、10月15日に掲載しました。そして、昨日不法投棄監視パトロールで行った富士市東部で、ナチシダの群落と出会いました。

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地域の山林は、各所で間伐作業が行われています。ここでは写真中央が間伐されていました。このような間伐を「列状間伐」というそうです。

隣接する未間伐の林内には見られず、このように間伐して林床の明るくなった場所に生育していました。

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林道から覗き見た時はウラジロかと思いましたが、少し違和感があったので林内に入って確認したところ、ナチシダと分かりました。

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とても大きなシダで見応えがあります。

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この個体は、小羽片の基部に通常の裂片ではなく小形の小羽片のようなものがついています。

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胞子嚢群は小羽片の裂片の縁に沿ってついています。胞子嚢群の付いていない先端部には鋸歯があります。

イノモトソウ科イノモトソウ属ナチシダ(Pteris wallichiana J.Agardh)。


数年前、N先生から富士市域の維管束植物仮目録のテキストデーターと一緒に、H先生が調査された富士市域のシダ植物調査リストも頂きました。その中にナチシダは掲載されていませんでした。リストをまとめられた最終年は分かりませんが、当時は富士市域に無かったのだろうと思われます。

ナチシダは、シカが食べないそうです。今回確認した林内では、ざっと数えて100株を優に超えていました。数年後には、ナチシダでいっぱいになるかもしれません。

2022年11月27日 (日)

着生植物の調査(ムギラン)

今日は、大学生の卒業論文のための調査に同行しました。卒業まで、まだ時間があると思っていたら、論文は年内に仕上げなければならないとの事でした。

調査対象は着生植物で、数か月前にも同行した事があります。今回は、最終確認と言ったところでしょうか?

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カヤの木に着生しているムギランです。うっかり、マクロレンズをつけたままのデジイチを持って行ったので、こんな写真になってしまいました。

ラン科マメヅタラン属ムギラン(Bulbophyllum inconspicuum Maxim.)。

このカヤの木に着生しているのを見付けた時は、幹の周囲にびっしり生えていました。ところが、下の方の枝が枯れ始めてから年々減少して来ています。


誰かに送って来てもらったと思ったら、かなり離れたところのバス停から歩いて来たとの事でした。山間の地なので、バスの本数が少なかったり運行が廃止された場所もあります。帰りはJRの駅まで送って行きました。前回の調査でも感じましたが、とても熱心な学生さん達でした。こういう人たちとのやり取りは、とても興味深く楽しいです。きっと良い論文に仕上げてくれると思います。
ところで、静岡県内でも生育が確認されている新種(植物)の記載論文が公開されます。11月30日の零時解禁となりますので、本ブログでも紹介させていただきます。

2022年11月23日 (水)

オオキジノオとキジノオシダ

図鑑には「オオキジノオは、キジノオシダに似るがより大きくなる」とあります。確かに、大きさである程度区別出来る場所もありますが、そうでない事も多々あります。草丈の大小は、生育地によっても異なるし、生育年数によっても変わって来ます。

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不法投棄パトで、地域の林道を走っているとキジノオシダ属の群落がありました。

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こちらは、その近くの土手で撮りました。良く見ると①オオキジノオと②キジノオシダが混生していました。草丈で区別出来ない場所です。

栄養葉を接写してみました。

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オオキジノオは、羽片に短い柄があります。柄は下の方に行くほどはっきりして来ます。

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キジノオシダは、「上部羽片の基部は中軸に流れ・・」とあります。羽片の基部が軸に張り付いたようになっています。

キジノオシダ科キジノオシダ属オオキジノオ(Plagiogyria euphlebia (Kunze) Mett.)。

キジノオシダ科キジノオシダ属キジノオシダ(Plagiogyria japonica Nakai)。

キジノオシダの和名は、葉の形が雉の尾に似るからだそうですが、再生畑を縄張りにしている雉を見てもあまり結びつきません。Ylistを見ると、キジノオシダ属には結構種類があるようです。伊豆には、キジノオシダによく似ていて羽片の先端だけに鋸歯のあるタカサゴキジノオシダが生育しているそうですが、まだ出会った事はありません。

2022年11月17日 (木)

マルバノホロシ

レンズケースの中で眠っていたマクロレンズを使ってみました。接写はTG-6で撮っているため、最近は留守番ばかりで出番がありませんでした。

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赤く熟し始めた果実が目に入りました。

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ナス科ナス属マルバノホロシ(Solanum maximowiczii Koidz.)。

ヤマホロシと良く似ています。花期には花の違いで識別し易いですが、果実期には分かり難い植物です。図鑑には、葉の基部の形態が異なる事や、ヤマホロシは一部の葉に切れ込みがある事など幾つかの識別点が謳われています。私は、葉柄の部分に翼がある方がマルバノホロシで、無い方がヤマホロシと覚えています。間違っていたら教えてください。


研究者から研究成果の連絡がありました。詳細はまだ掲載出来ませんが、ホンの些細なお手伝いでも研究成果の報は嬉しいものです。息子のような研究者との付き合いは長く、素人ながらに学んだ事は多々あります。彼との出会いが無かったら、植物以外に目を向けていたと思います。

2022年11月12日 (土)

亜高山帯の針葉樹林(その他)

久々に歩くと、いろいろなものが目につきやすくなります。気になったものを集めてみました。

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シダ植物です。左はフユノハナワラビのようですが、この標高にも生えるとは知りませんでした。右はマンネンスギだと思います。こちらは、もう少し標高の高い場所で多く見かけます。

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この時期、林床の下草は少なく、コバノイチヤクソウやズダヤクシュなどが目につきました。通常富士山の亜高山帯では、ツツジ科イチヤクソウ属としてコバノイチヤクソウ、コイチヤクソウ、ジンヨウイチヤクソウ、ベニバナイチヤクソウが見られます。一部混生している所もありますが、種ごとに棲み分けているような印象を持っています。

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こちらは、トリガタハンショウヅルの果実です。林内を歩くと小さな未開花株が所々で見られますが、開花株は林縁以外ではあまり見る事はありません。

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トウゴクミツバツツジです。近づいてみると冬芽が出来ていました。

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果実が落ちた後のテンナンショウ属です。草丈からすると、ヒガンマムシグサのハウチワテンナンショウタイプではないかと思います。夏に、この辺りで見かけているので・・。

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針葉樹林内を歩いていると、綿菓子のような甘い香りが漂って来ました。カツラノキの落ち葉です。この標高にも生育している事を初めて知りました。

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エビフライと称されるリスが種子を食べた後の針葉樹の球果です。長さからするとコメツガでは無くてトウヒかな?リスが樹幹を上っていく場面に遭遇した事があります。大きな音を立てて上っていたので気が付きました。リスは、音を立てずに移動すると思っていたのですが・・。

亜高山帯針葉樹林の記事は、これでお終いです。年々出不精になって来ました。来年も行く機会があるのだろうか?

2022年11月11日 (金)

亜高山帯針葉樹林のコケなど

苔むす林床を歩くと、別世界に入ったような印象を受けます。コケ植物の種名は殆ど分かりませんが、気になったものを少しだけ撮ってみました。

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所々に、白っぽいコケ植物が生えていました。

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ミズゴケ属のようですが、詳細名は分かりません。私の探索範囲では、標高300mくらいから2,000mを超す辺りまでミズゴケ属を見た事があります。ただ、生育エリアは限られており、土壌湿度の高いところや湧き水の流れるような場所で見かけます。亜高山帯の針葉樹林では、地生のラン科植物を探していると出会う事が多いです。

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これは、スギゴケ属のコセイタカスギゴケでしょうか?

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次は、下界で見るより大型のスギゴケの仲間です。深緑の葉が、林床で目立っていました。

コケ植物は、種子植物やシダ植物と異なり、維管束植物ではありません。ところが、スギゴケ属には、維管束植物の道管や師管に相当する組織があるそうです。面白いですね。

※道管は根から吸い上げた水や養分を運ぶ管、師管は光合成で作られた養分を運ぶ管で、人間の血管に相当する器官です。

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こちらはイワダレゴケかな?抗菌作用、抗癌作用のある物質を含む可能性があるそうです。地域では、標高の高いところで見られます。


苔テラリウムなどのWebページが、沢山アップされています。ところが、コケ植物は、鉢や容器内で長く栽培する事が難しい植物だと思っています。とても威勢が良く成長していたと思ったら、病気になって変色したり、あっという間に枯れてしまう事もあります。庭の彼方此方で試した結果、家の裏庭が一番長生きしています。手間のかからないのが、ハイゴケです。スミレ類と共に栽培している盆栽の鉢に進出し、繁茂しています。それを野鳥が巣の材料に咥えて行くので、営巣時期には、散らばって困ります。

2022年11月10日 (木)

冬を迎えるコイチヨウラン

11月になると、富士山五合目に通じる静岡県側の三つのルートが、順次通行止め(冬季閉鎖)になります。

確認したい事があって、滑り込みで亜高山帯の針葉樹林へ行って来ました。

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倒木にトウヒが並んで生えていました。針葉樹の香りが心地良い林内でした。

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確認したかったのはこの植物・・コイチヨウランです。とても小さな葉の植物なので、生育場所を知っていても、再会するにはその辺りをうろつかなければなりません。

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同じ環境に生育する一枚葉のイチヨウランは、秋に葉の更新があります。今年活躍した葉と来年活躍する葉の両方が見られる時期があります。

コイチヨウランはどうなのか確認したかったのですが、今回は分かりませんでした。ただ、フタバラン類のように冬に地上部が枯れるのではなく、葉をつけたまま厳しい深山の冬を迎える事は分かりました。

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針葉樹の樹皮を取り除くと、小さな苗が姿を現しました。細かい毛(根毛)が沢山生えています。根毛は、根の表面積を増やして、水分や養分の吸収率を高める働きをするそうです。針葉樹林に生育する野生ランの多くは、根が地中深くに伸びるのではなく、地上に堆積した落ち葉の中に伸びているという印象を持っています。落ち葉の中に潜む菌類から養分をもらうためでしょうか?

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この場所で花を確認したかったのですが、マイカー規制時の届け出が面倒で今年は断念しました。ここでは、何ヶ所かに小集団があり、一度は開花時期に訪れたいと思っています。

ラン科コイチヨウラン属コイチヨウラン(Ephippianthus schmidtii Rchb.f.)。


静岡県側の富士山国有林は、数年前からエリアを決めての有害鳥獣駆除ではなく、全域を対象に駆除作業が行われています。

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各所に、このような啓発看板が取り付けられています。「許可者以外は立入禁止」とあります。実は、11月31日まである許可を取ってもらってあります。その付帯事項として「また、本年度も富士山においては、有害鳥獣捕獲事業を実施しております。もちろん、富士山スカイライン沿線付近では猟銃は使用致しませんが、もし銃声が聞こえた場合は、林内奥への進入は御控え願います。」とあります。場所によっては、ライブカメラで監視している所もあるようです。入林される方は、くれぐれもご用心!

2022年11月 6日 (日)

カナムグラ

庭木などに絡み付いた蔓の除去作業は、かなり面倒です。中には、素手で触ると痛い目に遭うものもあります。カナムグラもその一つです。

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夕日を浴びて垂れ下がっているのがカナムグラです。

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葉は掌状で5~7裂します。

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葉柄も含めて硬い棘があります。腕まくりして触れると、みみず腫れになる事があるので要注意です。また蔓が固く、手で引っ張っても簡単に除去できません。剪定ハサミで切り取るのが一番です。

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ホップのような果実がぶら下がっていました。ビールの原料になるホップと同科なので、良く似ているわけですね。英名は、Japanese hopとあります。

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種子は、苞に包まれています。この植物は一年草で、雌雄異株との事ですから、メス株という事になります。再生畑②の隅にも繁茂していて、仮払い機で刈るのも面倒です。オス株の花期には、刺激を与えると多量の花粉が舞い上がり、花粉症の原因にもなっています。

厄介な植物ですが、茎葉と花は薬草として健胃や利尿効果があるそうです。

アサ科カラハナソウ属カナムグラ(Humulus scandens (Lour.) Merr.)。エングラーではクワ科とされていました。


大きくなったクリの木に登り、枝打ちを始めました。念のため安全帯を着用し補助ロープを使いましたが、年齢のせいもあり冷や汗ものでした。庭木も含め、まだ登れる内に出来るだけ切り詰めてしまうつもりです。樹上では思ったより体力を使うので、無理をしないように少しずつやっています。

2022年11月 1日 (火)

スギ・ヒノキ林の野生ラン(富士市域)

10月31日は、大学院生のフィールドワークに付き合いました。彼らが調査をしている間に、今迄より少し広範囲に探索してみました。

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少し樹木密度が高く、暗めの林内でした。

この日出会ったラン科植物を集めてみました。

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さて、これは何でしょう?

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ヒトツボクロの赤ちゃんでした。葉の更新が終り新葉が展開して、そろそろ種子を飛散する時期でした。

ラン科ヒトツボクロ属ヒトツボクロ(Tipularia japonica Matsum.)。

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ミヤマウズラです。前々回の記事と葉模様を比べてみてください。富士市域の場合、スギ・ヒノキ林ではベニシュスランに比べて個体数は少ないと思います。

ラン科シュスラン属ミヤマウズラ(Goodyera schlechtendaliana Rchb.f.)。

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こちらがベニシュスランで、少し広範囲に生えていました。ミヤマウズラと同じく葉模様の変異が多く、基本種と異なる変則な斑入り葉の個体も稀に見られます。

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実生苗が各所で見られました。中上にヒノキの球果が写っていますので、小さな事が分かると思います。

ラン科シュスラン属ベニシュスラン(Goodyera biflora (Lindl.) Hook.f.)。

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ヤクシマヒメアリドオシランも、所々で見られました。記録している分布域が、さらに広がりつつあります。

ラン科オオミギラン属ヤクシマヒメアリドオシラン(Odontochilus yakushimensis (Yamam.) T.Yukawa)。

この他に、コクランと葉が枯れる寸前のアオフタバランも数株見る事が出来ました。


山野を歩き始めた頃は、スギ・ヒノキ林に魅力を感じる事はありませんでした。依頼を受けてある植物を探した時に、予想外の出会いがあり、その後探索対象となりました。

遠方から来た学生さんたちは、大学院に戻りサンプル整理などをするそうです。家に戻ったのは夜中~明け方だったと思います。分野は違いますが、現役時代の忙しかった頃を思いだしました。熱意を持った研究者の手伝いは、とても興味深く勉強になります。今後も、依頼があれば続けたいと思っています。ただ、年齢的にそう長い期間ではないかもしれませんが・・。

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