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2021年5月

2021年5月27日 (木)

サイハイラン

昨日は、植物園の草刈りをして来ました。一人作業は、休みなしで行うのでとても疲れます。

各所でサイハイランの花が咲いていたので、受粉をして来ました。

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見方によっては、不気味な感もあります。萼片や側花弁が赤味がかった花も、このエリアで見る事が出来ました。この時期に葉は枯れはじめ、秋口に新しい葉が出て来ます。

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黄色い花粉塊を包む葯帽がある花と無い花です。葯帽の中には、老眼に優しくないとても小さな花粉塊が左右2個ずつ、計4個入っています。

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左の花には、葯帽がついたままの花粉塊が、二セット付着していました。訪花昆虫によるものだと思います。右の花は、少し花柄子房が膨らんでいます。既に受粉したようです。
ラン科サイハイラン属サイハイラン(Cremastra appendiculata (D.Don) Makino var. variabilis (Blume) I.D.Lund)。


研究者から依頼されて、実験用の種子を採るために人工受粉する事があります。また、ラン科の希少種に関しては、種の保存目的で自主的に人工授粉しています。同じラン科でも、花粉塊の位置やその粘性、柱頭の位置などが様々で、初めて受粉する時は戸惑います。

2021年5月19日 (水)

保全区のササバギンラン

今日は予報通り雨・・昨日、草刈りを頑張って良かった!

保全区で撮ったササバギンランの写真です。

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昨年、この個体のドライフラワーを見てキンランかと思い、名札をつけました。ところが、今年見たらササバギンランでした。

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この保全区では、キンランと同じく彼方此方で見る事が出来ます。

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花は殆ど開かないので、以前撮った写真を掲載します。

富士市域で生育が確認されているギンラン、ササバギンラン、クゲヌマランは、どれも似た花をつけますが、距の長さが違います。ギンランは、長く突き出る。ササバギンランは、短く突き出る。クゲヌマランは、距が極めて短い・・距が殆ど無いような印象を受けます。

ギンランについては、唇弁が花弁化して距の無いヤビツギンランが、変種として記載されています。ササバギンランも、距の無い花を見た事はありますが、まだ変種や品種の記載はないようです。

ラン科キンラン属ササバギンラン(Cephalanthera longibracteata Blume)。

保全区のキンラン

昨日は、植物園(造成中)の草刈りに行って来ました。夕方まで頑張ったので、帰宅する頃には腰が痛くなりました。

広大なエリアの一角に、コナラなどの落葉広葉樹優先の保全区があります。そこには、キンラン、ギンラン、ササバギンランが生育しています。特に、キンランとササバギンランはかなりな個体数を見る事が出来ます。

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18日15時半頃に、デジイチで撮影。

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15日の昼頃に、コンデジで撮影。

キンランの花は、夜や日照の悪い時には閉じています。開花の指令を出すのが、照度センサーか温度センサーか分かりませんが・・。

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このキンランは、シカ柵の外に並んで生えていました。花が終盤を迎えた頃、白っぽくなることがあります。この花が、咲き始めからこのようだったのか分かりませんが、そうだとしたら品種のシロバナキンラン( f. albescens S.Kobay.)かも?

ラン科キンラン属キンラン(Cephalanthera falcata (Thunb.) Blume)。


以前、近くの山林で40個体ほどの蕾を持ったキンランを確認しました。一週間後に写真を撮りに行ったら、開花株は全て無くなっていました。その数年後、ある人から隣の市にある山野草店に卸されたと聞きました。

三者共生するキンランの人工栽培は難しく、山野草店で売られているものは、農場で人工栽培や増殖されたものではなく、山野から採取(盗掘)されたものだと思われます。この保全区のような環境でなければ、やがては枯れてしまう運命にあります。

2021年5月14日 (金)

サクラソウの生き残り

私が初めてサクラソウを見たのは、信濃の狼「川上犬」に会いに行った長野県南佐久群川上村でした。一面ピンクに染まる自生地を見て、とても感動しました。

以前の記事でも書きましたが、1983年発行の静岡県植物相調査報告書に、「昔は富士山麓に多生したが今は殆ど絶えた」とあります。その幻の花の生き残りに、出会う事が出来ました。

暗っぽい写真で、恐縮ですが・・。

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光条件が悪くなった林内で、一見クリンソウかと思えるような花色の濃いサクラソウが少しだけ咲いていました。生き残っていてくれて有難う!

サクラソウ科サクラソウ属サクラソウ(Primula sieboldii E.Morren)。

中国名も「櫻草(yīng cǎo)」です。


【地域に生育する希少植物の保護】
この日は、ある希少植物の保護に関して、隣県から経験豊富なお二人が現地視察に来てくれました。行政は、いろいろな法律は作りますが、実際に守るための手段を講じる事は殆ど無いと思います。十数年山野を歩いて来て、そう思うようになりました。結局は、環境の悪化により衰弱して枯れ死するか、野生動物の食害に遭ったり、心無い人に連れ去られて姿を消してしまうと思います。

地域由来の希少植物を何とか守りたいと思いながら、その手段に行き詰まっていました。どちらかというと、交友関係のあまり広くない私に、山の神様が手を差し伸べてくれました。詳細は書けませんが、お二人は合法的にこの植物を守る術を持たれていたのです。
まだまだ、クリアーしなければならない事がいろいろあり楽観はできませんが、不透明だった先行きが明るくなって来ました。今後は、発見者の方、そして隣県からやって来た救世主のお二人と相談しながら、守る道を歩んで行きたいと思います。

2021年5月13日 (木)

コアツモリソウ

静岡県東部に生育するコアツモリソウを撮ってみました。ここでは、4月末頃から咲き出すようです。

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ぶら下がって咲くので、花芯の捉えにくい花です。

ところで・・。

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この花、ほっぺを両手で押さえたように感じませんか?この場所で初めて出会った時、他地域に生育する個体に比べて唇弁が細長いような印象を受けました。ここでは、こんな花を良く見かけます。

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図鑑によると、「葉は対生」とあります。良く見ると、茎を含めた一方の葉にもう一方が被さって合着したように見えます。撮り方が悪くて分かり難いかもしれませんが・・。

下段は、以前撮ったアルビノの個体です。普通葉の個体で、このように互生になっているものを探していますが、まだ出会えておりません。

ラン科アツモリソウ属コアツモリソウ(Cypripedium debile Rchb.f.)。

中国名は、對葉杓蘭(对叶杓兰)・・対生の葉に柄杓のような花をつける蘭という意味でしょうか?別名の小喜普鞋蘭(小喜普鞋兰)も、唇弁の形を靴に見立てた命名でしょうか?命名の理由を想像するのも楽しいです。

2021年5月 9日 (日)

ムサシアブミ

一昨年でしたか、オオハンゲの葉を富士市某所で見付けて、ムサシアブミと勘違いしました。花を見ようと、幾度か通ったのですが、咲いたのはカラスビシャクに似た花でした。オオハンゲも、富士市では初見でした。双方を見比べると、葉の大きさが全然違いました。

少し前に行った、静岡市某所・・。

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嫁さんの運転する車の助手席で、この光景が目に留まりました。「あっ、ムサシアブミだ!」・・渋い顔をされながら、慌てて撮りました。だからピンボケ・・。

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姿が分かるように、別の所で撮った写真も掲載します。

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花色は、二種類があります。静岡市某所では、両方が混在していました。

ムサシアブミは、栄養繁殖しやすい種のようで、数年後に見るとかなり個体数が増えている事があります。姿は違いますが、ウラシマソウを思い浮かべました。

サトイモ科テンナンショウ属ムサシアブミ(Arisaema ringens (Thunb.) Schott)。


従来の生育地は、本州(愛知県、福井県以西)、四国、九州とされて来ましたが、静岡市在住の星山先生のWeb図鑑「テンナンショウ属 Arisaema 」によると、ムサシアブミが静岡県でも見られるようになったのは、栽培品の逸出或いは温暖化によるためと考えられているようです。

2021年5月 7日 (金)

ヒメウツギとマルバウツギ

我が家の周りでも、ウツギと名の付く花がいろいろ咲いています。その中で、ウツギ属のヒメウツギとマルバウツギの花を比べてみました。

【ヒメウツギ】

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葉は、長楕円状披針形または狭卵形とあり、マルバウツギよりも細長くなります。

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「花糸は両側に翼状に広がり、翼の先端は広がって尖る」・・ウツギ属は、花糸の形態も識別要素になります。

アジサイ科ウツギ属ヒメウツギ(Deutzia gracilis Siebold et Zucc.)。

【マルバウツギ】

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葉は楕円形~卵形で、他のウツギ属より丸いのでマルバの名がついています。

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ヒメウツギが下向きに咲くのに対して、こちらは上を向いて咲きます。「花糸に翼があり、翼の上部はなだらかな肩になり、歯はない」・・ヒメウツギと比べてみてください。老眼向きの識別点としては、花の中心部にあるオレンジ色の花盤の有無が、ヒメウツギとの違いです。

アジサイ科ウツギ属マルバウツギ(Deutzia scabra Thunb. var. scabra)。


ウツギと名の付く植物はいろいろあり、アジサイ科ウツギ属ばかりではありません。紛らわしいですね。個体毎の差はありますが、我が家の周りで見られるウツギ属は、ヒメウツギ→マルバウツギ→ウツギの順に開花します。この時点で、ウツギはまだ萼に覆われた蕾でした。

2021年5月 4日 (火)

エビネ

キンランの生育する環境は、エビネにも適しているようです。

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園芸採取により姿を消しつつあったのですが、最近少しずつ復活しているようです。もう少し奥に行くと、株立ちした見事なエビネを見る事が出来ます。でも、この日は藪蚊に襲撃されたので止めました。

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花を接写してみました。花柄子房に沿って距が伸びています。同じエビネ属でも、ナツエビネやサルメンエビネには距がありません。

中国名は、蝦脊蘭(カセキラン/xiajilan)・・球茎を海老の背中に見立てて名付けられたようで、これは和名と同じですね。花や植物体の特徴を的確に表現した命名が多く、調べる度に納得しています。

ラン科エビネ属エビネ(Calanthe discolor Lindl.)。


最近では、園芸用に作出(選別交配)されたものが販売されており、野生の花から想像もできないような豪華な花を見る事が出来ます。気になったものを撮らせていただきましたので、「権兵衛の種蒔き日記」で見てください。

2021年5月 3日 (月)

キンラン

今日も、再生畑に耕運機をかけに行って来ました。野菜を植えてあるところは、仕方なく草取りしているのでまだ良いのですが、そうでないところはあっという間に草原になってしまいます。

萌の夕散歩の後、キンランの写真を撮りに行って来ました。

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花はとても小さいのですが、黄色い色彩は緑の林床で目を惹きます。右の個体は、クサソテツの中に潜んでいます。最近、シカの食害に遭ったシダ類を見かけますが、クサソテツはなぜか食べられていないようです。

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花は平開せず、角度を変えて覗かないと中の様子が分かりません。2個の花粉塊が目のようですね。最下段は、片方の花粉塊が無くなっています。送粉者である小型のハナバチが、訪れたのかもしれません。

キンランは、光合成をしていますが、菌類に栄養依存している部分的菌従属栄養植物です。アルビノのような個体でも花を咲かせる事から、菌類への依存度の高さが伺えます。しかも、キンランが栄養依存する菌類は、コナラなどから養分をもらって生きているそうです。栽培棚に並べても、いずれは枯れる運命にあります。生育していた林内で見るだけにしましょう。

ラン科キンラン属キンラン(Cephalanthera falcata (Thunb.) Blume)。


素人考えでは、菌類の豊富な場所ではアルビノやそれに近い個体の出現する可能性が高くなるのかもしれません。

菌への依存度が高く、根が退化しているヤクシマヒメアリドオシランの分布調査を行っていて、そんな事を思うようになりました。最初に出会った場所は、スギの葉が林床を埋め尽くすくらい堆積していて、土壌湿度の高い所でした。その場所には、他ではあまり見られない斑入り葉の個体が各所で見られました。中には、全体がアルビノの個体もありました。

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