2024年7月11日 (木)

キツリフネ

キツリフネの花を初めて見たのは、富士山南面の1,400m辺りでした。そのため下界で見たツリフネソウより開花が遅いと思っていました。その後、高度300~400mでキツリフネと出会い同じ高度ではツリフネソウより開花が早いことを知りました。

畑と植物園の作業ばかりしている内に、富士山は山開きして山野では様々な花が咲き乱れています。高度400mくらいに咲いていたキツリフネを撮ってみました。

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ツリフネソウ属の花は面白い形をしています。蜜が距の中に溜まるため嘴の長い昆虫でないと蜜を吸う事が出来ません。送粉者はトラマルハナバチだそうで、花の中に頭を突っ込んで蜜を吸うため効率的な受粉が行えるとあります。

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蕾も面白いですね。

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こちらは果実のようです。ツリフネソウ属は一年草です。種子散布する前に刈り取られてしまうと、絶えてしまいます。道路脇で見かけたピンクのツリフネソウは、残念ながら姿を消してしまいました。

ツリフネソウ科ツリフネソウ属キツリフネ(Impatiens noli-tangere L.)。別名をホラガイソウというそうです。こちらの方がイメージが湧きやすい感じがします。


キツリフネの方が開花時期が早いと書きましたが、最速最遅の花同士で交雑することはないのだろうか?Ylistには、沢山のツリフネソウ属とその品種が掲載されていますが、Impatiens noli-tangere×Impatiens textoriiは見当たりません。

Web検索すると、「ツリフネソウ-キツリフネにおける異種花粉の受粉における繁殖成功度の低下」という論文が見つかりました。長野県安曇野市では、ツリフネソウとキツリフネの分布と開花時期が重なっているそうです。両種とも送粉者はトラマルハナバチですから、種間送粉が行われます。ところが「異種花粉が混入した場合結果率(花が果実になる割合)が大幅に減少し、同種花粉が先に受粉してもその後異種花粉が受粉すると結果率が低下する」とあり、交雑するとは書かれておりません。

交雑種を期待していましたが、それは望めないようです。同属なのにどうして交雑種が出来ないのでしょう?分布や開花時期が重なる種を守るための進化の一例と言えるようです。植物の生き残り戦略は、多様で興味深いですね。

2024年7月 6日 (土)

ミズオトギリとヌマトラノオ

湿原に生育する植物に出会う機会は少なく、特別な思い入れを持って見てきました。同時期に開花するミズオトギリとヌマトラノオは、浮島ヶ原自然公園で出会ったのが最初でした。

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左がミズオトギリで、右がヌマトラノオです。掲載写真は、地域産の種子を採取して育てたものです。

ヌマトラノオは県内各地で生育確認されており、「稀ではない」とか「やや普通」と表現されていますが、湿原自体が少ないので、どこでも見られるわけではありません。湿原に生育する植物のうち地下茎で栄養繁殖する種は、適正な環境なら群落を形成します。ただ土壌が乾燥化すると、草丈が短くやがては姿を消していきます。ヌマトラノオとオカトラノオは開花時期が同じなため、交雑種のイヌヌマトラノオが生育確認されている場所があり、静岡県東部では田貫湖が挙げられています。

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静岡県植物相調査報告書によると、静岡県東部におけるミズオトギリの生育地は田貫湖と浮島沼で、花は午後3時から4時頃開花するとあります。田貫湖の生育地は、今年初めて確認しました。

ミズオトギリもヌマトラノオと同じく地下茎で栄養繁殖しますが、ヌマトラノオの方が繁殖力は旺盛で田貫湖の生育地ではその違いが如実に表れていました。

オトギリソウ科ミズオトギリ属ミズオトギリ(Hypericum crassifolium (Blume) Nakai)。

サクラソウ科オカトラノオ属ヌマトラノオ(Lysimachia fortunei Maxim.)。


このところ異常に暑い日が続いています。木曜日には、畑の除草と遅ればせのジャガイモを収穫しました。デストロイヤー(グラウンドペチカ)を二畝だけ収穫するのに、あまりの暑さに危険を感じ幾度も木陰に退避しました。残りの種は後日です。

2024年6月30日 (日)

マンネンスギ

研究者の依頼を受けて、ある植物の標本採集に行って来ました。そこにシダ植物のマンネンスギが生えていたので撮ってみました。

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地面を這っているのは、マンネンスギと同属のヒカゲノカズラです。ヒカゲノカズラを最初に見た時は、カイニンソウ(海人草/標準和名はマクリ)を連想しました。幼いころ回虫の駆除薬として飲まされた記憶があります。とても不味かったです。

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この場所はスギ・ヒノキの人工林ですが、初めて出会ったのは富士山の亜高山帯でした。比較的高度の高いところに生育しているようです。少し形態は異なりますが、低山の小川脇などでマンネンスギに似たミズスギに出会うこともあります。

スギのミニ盆栽のようなこのシダ植物を気に入って、見かけるといつも写真を撮って来ましたが、その度、撮るのが難しいと感じています。

植物園の手伝いをするまでは、シダ植物で興味を惹いたのはヒカゲノカズラ科のヒカゲノカズラとマンネンスギくらいでした。

ヒカゲノカズラ科ヒカゲノカズラ属マンネンスギ(Lycopodium dendroideum Michx.)。


植物園の草本エリアに何種類かのシダ植物を植えてあります。シダ植物は簡単に根着く種もあればそうでない種もあり、当初思っていたよりかなり難しいことを知りました。

導入植物は、採集後自宅で鉢植えして根着くのを待ってから、植物園に移植する方式をとっています。理由は、マメな管理ができないため枯れてしまう恐れがあるからです。シダ植物の地上部が枯れてしまい諦めて鉢をひっくり返すと、新しい根が伸びていることがあります。また植えなおして数か月置くと新芽が伸びて来ました。半年~一年と時間をかけて結果の分かる種も多いです。

現在、このマンネンスギを鉢植えして様子を見ています。採集後半年以上経過していて新芽が姿を現していますので、そろそろ移植しようかと思っています。趣味家の人の話では、ヒカゲノカズラ科の栽培は難しいそうです。手間のかかる植物の栽培も、上手くいけば楽しいものです。

2024年6月28日 (金)

サカキの花

サカキは、地域の山林内でも時々見る事が出来ます。所有林に実生苗が生えていたので、採って来て裏庭に植えました。20cm程度だったその苗は、時を経て2.5mほどに育ちました。

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見上げた枝に蕾がついていました。今回が初花だと思われます。

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咲き始めの花・・つま先立ち片手撮りです。よく見ると裏にクモが隠れています。

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花柱が長いですね。長花柱花は、自家受粉を防ぎ他家受粉を促進させる働きがあるそうです。

サカキ科サカキ属サカキ(Cleyera japonica Thunb.)。Wikipediaではモッコク科とされていますが、Ylistに倣いました。旧分類体系では、ツバキ科とされています。


奈良時代以前には、サカキ、ヒサカキ、シキミ、アセビ、ツバキなど神仏に捧げる常緑樹の総称が「サカキ」だったそうです。地域により違いがあるのかもしれませんが、現在サカキは神事に、シキミは仏事に、そしてヒサカキは両方に使われていると思います。そのように分かれたのは仏教が一般化した平安時代から中世以降で、明治時代の神仏分離令が出てから庶民の間でもこの傾向が広まったとあります。

2024年6月23日 (日)

タカネイチヨウラン

10年ほど前、ブログ記事に「亜高山帯高域に生育するイチヨウランは、低域に生育するものとは別種のようだ」と書きました。高域で見かける個体は、丈が短くて花が小さく俯き加減に咲きます。唇弁も白っぽく無班に近いものが多くて、とても弱々しい印象を持ったからです。

その記事を見た研究者の方から「他県でも同じようなことを言っている人がいた」と連絡がありました。2016年にその方の依頼を受け、複数回生育地を案内しました。

それから6年後の2022年に、以前からフィールドワークの手伝いをしてきた別の研究者からの依頼で、採集許可を取ってもらい低域と高域のイチヨウランを彼の元へ送りました。解析の結果、低域と高域では共生菌が異なるとの連絡がありました。そして、2024年5月にタカネイチヨウランの記載論文が送られてきました。

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低域に生育するイチヨウラン(Dactylostalix ringens)です。背萼片や側花弁が立ち上がっていて誇らしく咲いている印象の花です。萼片や花弁の基部に斑点があり、唇弁の斑紋も目立ちます。

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亜高山帯高域で、このピンボケ写真を撮った頃から、上のタイプとかなり違った印象を持っていました。

そして次が、最初の研究者と二度目の調査に行った時撮った写真です。

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過去にPergamina unifloraとして記載されたものは、Ylistでは現在イチヨウランのsynonymになっていますが、イチヨウラン(Dactylostalix ringens)ではない種として復活させたそうです。復活させた種はタイプ標本が沢山あったため(すべてが同じとは限らないため)、海外にも連絡を取って確認したとメールに書かれていました。大変な作業であっただろうと思いました。

亜高山帯高域で見られることから、タカネイチヨウランの和名が付けられました。長年気になっていた事が研究者により解明されて、とてもすっきりした気持ちです。ちょっぴり残念だったのは、この種が静岡県だけでなく他地域でも生育確認されていたことです。

ラン科イチヨウラン属タカネイチヨウラン(Dactylostalix uniflora)。

高域でも低域と同じようなタイプの見られるところもあります。交雑したのか、中間的な個体も確認されているようです。場所によっては、タカネイチヨウランばかりのところもありましたが、研究者のネットワークによる調査では、希少種であるイチヨウランよりも遥かに個体数が少ない超希少種である事が書かれています。

2024年6月14日 (金)

イラクサとムカゴイラクサ

植物園の草本保全区では、植栽部の除草作業を手で行っています。そこに恐ろしい植物が生えています。

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大きな葉の方がイラクサで、右の小さな葉の方がムカゴイラクサです。イラクサの葉は対生でムカゴイラクサの葉は互生です。どちらも棘に触れると痛い目に遭います。

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イラクサの棘。

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ムカゴイラクサの棘。

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ムカゴイラクサの葉脇にムカゴが付き始めています。冬に地上部が枯れるため、早期にはムカゴが見られないこともあります。

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こんな恐ろしい植物を食べるやつもいます。

イラクサとムカゴイラクサは、刺さっただけで痛いバラなどの棘と違い、棘にギ酸を含み(図鑑により表現が異なります)毒虫に刺されたような痛みが継続します。

イラクサ科イラクサ属イラクサ(Urtica thunbergiana Siebold et Zucc.)。

イラクサ科ムカゴイラクサ属ムカゴイラクサ(Laportea bulbifera (Siebold et Zucc.) Wedd.)。


このところ、植物園と畑の草取りが続いています。見た目地味な作業ですが、私にとっては仮払い機による草刈よりも大変です。しゃがんで立ち上がる時足腰が痛いし、草を捨て場に運ぶのも楽ではありません。それとこれからの季節は、暑さとやぶ蚊も厄介です。ただ奇麗になっていくので、達成感はあります。

2024年6月 7日 (金)

ホソバショリマ再び

昨日は、一般の人が入れない場所の植生調査をさせていただきました。主目的はラン科でしたが、予期せぬ出会いがありました。

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切っ掛けは僅か3本のこの葉でした。「あれっ、下の方に小さな耳状の羽片がある!ホソバショリマじゃないか?」周辺を探しましたが、この一株以外は見つかりませんでした。

付近には、よく似た葉色のシダ植物が繁茂しています。この葉が出芽して間もないと思われる姿だったことも気づく要素となりました。ホソバショリマは常緑ですが、この地域では冬に地上部が枯れます。そして同じく冬に地上部が枯れる他のシダ植物よりも遅れて新葉が伸びて来ます。

いったん車に戻り、長期戦覚悟で再探索を開始しました。

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上の3本の葉の所から数百メートル歩いた場所で、この群落と出会いました。

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ホソバショリマだ!そして周辺を注意深く探索すると・・。

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更に大きな群落がありました。そしてここから離れた他の場所でも2か所の群落を発見しました。

現地はササ刈がされていましたが、地上部の無い冬に刈るため群落は無事でした。管理者の方に現地を見ていただき、群落の保護をお願いしました。

ヒメシダ科ヒメシダ属ホソバショリマ(Thelypteris beddomei (Baker) Ching)。中国名は「長根金星蕨 」・・根の特徴や葉色を上手く表現された命名だと思います。


杉野孝雄先生の静岡県産希少植物図鑑に「東部の富士宮の限られた場所にある。筆者により田貫湖で発見されたのが、本州では最初の記録。静岡県は分布の東源自生地である。」とあります。

また、国立科学博物館つくば実験植物園のWebページに「当園のものは北限産地とされる富士宮市産を一鉢いただいたものが、現地同様に小川の土手に見事な群落が再現されました。」とあります。

ホソバショリマの群落を見るのは、これが2度目です。主目的は果たせませんでしたが、今回は自身で発見した事もあり、より嬉しい成果を得る事が出来ました。

2024年6月 4日 (火)

ドクダミの花

もう十年以上も前に、町内の空き地にドクダミの変化花が咲いていました。地主に断って少し採取させてもらおうと再訪したところ、除草剤が散布され全滅していました。

その後、別の場所でも見かけましたが採取することは出来ませんでした。そして、昨年静岡県と愛媛県で変化花に再開できました。

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一般的なドクダミの花は、このように白い部分が4枚あります。これは花弁ではなく苞です。そして花は真ん中に伸びる塔のような部分です。

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黄色い部分が雄蕊、先端が三裂した半透明のような部分が雌蕊の柱頭です。

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こちらが昨年静岡県で採取した変化花です。面白いでしょ?

苞は葉の変化したものなので、中には緑色を帯びたものもあります。上のような八重タイプをヤエドクダミ(f. plena (Makino) Okuyama)緑色のタイプをミドリドクダミ( f. viridis J.Ohara)、斑入り葉のタイプをフイリドクダミ( 'Variegata')と呼ぶそうです。

品種や斑入り葉のタイプは、園芸品として栽培されるようですが、ドクダミは鉢底の水抜き穴からも地下茎が伸び繁殖しますので、置き場に注意が必要です。

ドクダミ科ドクダミ属ドクダミ(Houttuynia cordata Thunb.)。


今日は、親戚からもらったキュウリとトウガンの苗を植えて、遅ればせの落花生のポット苗も植えてきました。カボチャとスイカエリアには稲わらも追加しました。ランナーが伸びたイチゴの整理もしたかったのですが、北の空が暗くなって今にも雨が降りそうな感じだったので、諦めて帰宅しました。洗濯物をしまわないと、鬼のような形相でグズグズ言われるので・・。

2024年5月27日 (月)

コアジサイ

ハナミョウガの花に見とれていたら、コアジサイの花が見頃でした。出不精になっている間に、季節に取り残されているような気持になりました。ピンボケ写真ですが掲載します。

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コアジサイは、他のアジサイ属と異なり装飾花がありません。小さな両性花だけの花は、どこか優しい感じがします。

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花色は個体ごとに微妙な違いがあります。中には紫の色素がない白花(シロバナコアジサイ: f. albiflora (Honda) Okuyama)を見ることもあります。

アジサイ科アジサイ属コアジサイ(Hydrangea hirta (Thunb.) Siebold et Zucc.)。

秋に愛鷹山系を歩いていると、林縁だけでなくスギやヒノキの人工林内でも、黄色く紅葉した葉が良く目につきます。

Wikipediaに気になることが書かれています。「本種は山野の自生種は珍しくないが、栽培は困難である」・・植物園植栽用に挿し木で増殖しようと思っていたのですが、どうしてでしょう?


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植物園のビオトープでも見たモリアオガエルの卵がありました。樹下の水場では孵化したオタマジャクシが沢山泳いでいました。

昨日は畑の様子見に行きたかったのですが、家族にせかされて破れた網戸の張替えをしました。その間、家の水場でヤマアカガエルが鳴いていました。カエル予報でも、天気が崩れるようです。

2024年5月23日 (木)

ハナミョウガ

ヌマトラノオの保護柵を設置した場所の近くに、ハナミョウガが咲いていたので撮ってみました。

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偽茎(葉鞘が重なり合って茎のように見える)の先に穂状にたくさんの花をつけます。

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紅色のストライプのある唇弁が奇麗な花です。

ショウガ科ハナミョウガ属ハナミョウガ(Alpinia japonica (Thunb.) Miq.)。

ついでに、あまり見ることのないショウガ科ショウガ属ショウガの花を掲載します。

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昨年、畑のショウガに蕾らしきものが出てきたので、花瓶に挿しておいたらこんな花が咲きました。珍しいでしょ?


ハナミョウガは、県内各地の低地から山地に分布とありますが、私の住む富士市では見られる場所が限られています。富士市植物仮目録(中山Ver.)にも、当初の記載から追加された場所もありますが「稀」とあります。
富士市域の分布において似たような印象を持っているのがランヨウアオイです。富士市域にも分布しますが、ハナミョウガと似た空白の場所があります。

ハナミョウガもランヨウアオイも生育地ではかなりな個体数を見る事が出来ます。ある方がギフチョウの食草としてランヨウアオイを探していました。その方がお住いの地域には「いっぱいありますよ!」と伝えましたが、半信半疑だったようです。出会えなければ、その人にとって希少種となります。

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