その後のサワトラノオ
サワトラノオの栽培実験記録の追加報告をまとめていたら、また新たに気付いた事がありました。現時点の状況を、簡単にまとめてみました。
【二年目の実生栽培】
今年実験で得た種子(左)と昨年公園で採取して常温保存して置いた種子(右)を、同じ実生床に撒いてみました。種子数を数えた訳ではありませんが、同じような目分量で撒いてこのような違いが出ました。発芽率は落ちますが、1年を経過しても発芽能力のある事が分かりました。
マウスを乗せた写真は、発泡スチロールの実生床に撒いたものです。実験で得た個体を、ある施設で栽培する許可を頂きましたので、プランター栽培の株元から出た新芽の成長を待っていますが、現地担当者との打ち合わせにより、実験場で経験した事の無い事象を聞きましたので、保険を兼ねて実生苗も準備しています。
接写してみました。密集したままだと苗が淘汰されていくので、有効に育てるためもう少し経ったら移植して株間を開けます。それにより、更なる成長の促進が望めます。播種は一度だけでしたが、御覧のように子葉の出現したばかりの苗も確認出来ます。多くは自然播種される頃発芽し、その後ポツポツ時期をずらして発芽が確認出来ます。
【水に挿した当年茎】
このように透明のペットボトルを切断したコップに、刈り取った当年茎を挿しておきました。早いものは、1週間ほどで葉腋から新芽が出現しそれから根が伸び始めました。当年茎は、まだ緑を保っているものもあります。
当年茎が緑を保っているものと、枯れて腐食し始めたものを撮ってみました。水に浸かった部分は、ほぼすべての葉腋から新芽と発根が確認されました。ここで注目なのは、上の写真の真ん中のコップです。水に浸かっていない部分にも、葉腋からの新芽が出現しています。
【水上に出ていた分岐枝】
水中の当年茎ばかりに注目していましたが、1本だけヒツジグサの葉の隙間から空中に伸びた当年茎(分岐枝)が残っていました。良く見ると、葉腋から新芽が出て発根し始めていました。
これは、上の真ん中のコップで見た新芽と重なるところがありますが、植物体全体が赤味を帯びています。
【水中発芽の実験】
以前の記事にも掲載しましたが、水中の場合、発芽率の高い事が確認されました。でも、その後、水飲みに来た野鳥によって多くの苗が浮いてしまいました。浮いたままでも、生き続けると思っていたのですが、今度は葉が無くなり茎ばかりになって、消滅して行きました。水中の葉には食痕が見えます。ボウフラが子葉に食痕を残す事があるのか分かりませんが、新たに播種して仕切り直しをしました。
【判明と想像】
腰水栽培実験で発根を最初に確認したのは、花期でした。ヒツジグサの葉で覆われたり、植物体が重なり日照の悪くなった部分に発根が確認出来ました。これは「サクラソウ科の植物は挿木で発根する」というWeb記事からも、ある程度予想していました。
そして、果実が熟す頃に切り取った茎を水を入れたコップに挿しておいたところ、僅か1週間ほどで発芽が確認出来ました。また、水上に出たままだった分岐枝からの新芽と発根にも気づきました。腰水栽培の個体の寿命の長さや、株元から出現する新芽の多さと生育の速さなどにも驚かされました。
水に浸かっている個体の場合、果実期が終わる頃になると、当年茎の枯れる前に子孫を残そうと積極的に栄養繁殖が行われるようです。現状の公園の環境とは違った、もっと水位の高い場所が、この植物にとって一番住み心地が良いのではないかと思うようになりました。
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