シュンラン
富士市で、春一番に咲く野生ランは、シュンランです。今年は暖かいので、そろそろ咲いているだろうと思い、近くの山林を見に行きました。
「咲いていました!」
右の株は、昨年一茎二花をつけましたが、今年は花が見えません。葉が少ないのは、昨年シカの食害に遭ったせいです。シュンランも、シカの食料対象になっているのです。
似た葉を持つ植物で、キジカクシ科のヤブランはあまりシカに食べられないようですが、青い種子(果実ではありません)をつけるジャノヒゲは、シカに食べられ刈り取られたようになっているのを良く見かけます。
花は、少し俯き加減に咲きます。近隣では、ジジババなんて呼ぶ人もいます。
こちらは、二つの花をつけていました。花の有無は、株の大きさや葉の数に関係ないようです。
シュンランは、微細種子が共生菌の力を借りて発芽しても、直ぐに光合成を行わず(葉を出さずに)、ショウガのような根茎を伸ばし続け、かなりな大きさになるまで地下生活を送るそうです。
昨年咲いた株に、今年も続けて咲くとは限りません。発葉して光合成を行うようになってからも、菌への依存度がある程度高いのかもしれません。
両腕を広げたような部分が側萼片、白く斑紋のある舌のような部分が唇弁、その上に見えるのがオシベとメシベの合体した蕊柱(右の写真)、蕊柱を覆うようにあるのが側花弁、更にその上にある笠が背萼片です。萼片や花弁の色、形、そして唇弁の斑紋にも変異があります。
ラン科シュンラン属シュンラン(Cymbidium goeringii (Rchb.f.) Rchb.f.)。
高知県や徳島県には、変種(※)のホソバシュンラン(Cymbidium goeringii (Rchb.f.) Rchb.f. var. serratum (Schltr.) W.S.Wu & S.C.Chen)が自生するそうです。葉の幅が4~6mmとありますが、静岡県でも、そのくらい細い葉を持つ個体を見かけます。でも、それはホソバシュンランではないそうです。ホソバシュンランは、萼片と側花弁の幅も狭いそうですが、それ以外の花などの詳細構造の違いは、まだ把握しておりません。葉の長さが、400~500mmを超すような個体も、静岡県内で見る事があります。ナガバシュンラン・・なんて呼びたくなりますね。
※:日本のランハンドブックでは、ホソバシュンランの学名がf.angustatum(F.Maek.,nom.nud)T.Yukawa,ined.となっており、品種とされています。
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