ムギランの果実と種子
今朝は、今冬一番の寒さでした。隣の畑には、霜が降りていました。
ムギランの果実が裂開し、種子が飛散していました。富士市で確認されている着生ランでは、ヨウラクランと同じくらいの時期に裂開します。カヤランやクモランはまだ緑色を帯びています。
こちらが、ムギランの種子です。飛散と書きましたが、実際は零れ落ちると言った方が適切だと思います。シュンランや、エビネ、ヤツシロラン類の種子と少し感じが違います。
結実率は良いようですが、送粉者(ポリネーター)を見た事がありません。これはクモランも同じです。もしかしたら、両者とも自家受粉をするのかも?
ついでに、野生ランの液果の一つを掲載します。
これは、ツチアケビの果実を切ったものです。
ツチアケビは、ラン科の菌従属栄養植物(腐生蘭)です。バニラやショウキランの仲間と同じく、果肉の中に種子を宿す液果です。蒴果の種子に比べると、少し大きく見えます。野鳥によって種子が運ばれるそうです。
ランの種子は、発芽に必要なエネルギー源となる栄養分の貯蔵組織が無いため、菌類の力を借りないと自力で発芽する事が出来ません。
種子の寿命はどのくらいあるのでしょう?ある書物によると、「ランの種子は、夏の高温や湿気、冬の低温にさらされると、発芽能力が短期間に急激に落ちる。」と書かれていました。保管してある種子は、既に発芽能力が失われているかもしれません。
この本には、もう一つ興味深い事が書かれていました。「自然界では、完熟した種子は発芽に適した季節まで種子を休眠させるため、発芽を抑制する物質が生じていると考えられる。種子は完熟期間の約1/2で発芽能力を有する。」とあります。例えば、発芽まで2年かかるヤマシャクヤクの種などを、早期(完熟前)に採取すれば早く発芽するのかも?
こういう事は、綺麗な花や希少種の植物を見て歩くよりも、ずっと興味深い!
◇コメントを頂き訂正と追記します◇
ヤマシャクヤクの発芽に2年かかると書きましたが、コメントを頂き、興味ある記述を見付けましたので掲載します。引用元(斑入りヤマシャクヤクの魅力)のURLは下記です。
ヤマシャクヤクの発芽は、種を蒔いたその年の秋に発根して、翌年3枚葉を展開する場合と、1年眠って翌年の秋に発根し蒔いてから2年後に3枚葉を出す場合の、2パターンがあります。紅花ヤマシャクヤクなどは、蒔いた2年後の発芽が主流になりやすく、普通の白花ヤマシャクヤクでは蒔いた翌年の発芽が主流となります。
これは採り蒔きした時の話で、完熟して乾燥しきった種はこの限りではありません。
詳しくは知りませんが、完熟させたり乾燥させると翌年発芽よりも2年後の発芽の方が多くなるようです。
私は、果皮が裂開し、種子が零れ落ちる頃採取していましたので、二度の経験が2年後の発芽となったようです。「完熟すると発芽を抑制する物質が形成」されたためではないでしょうか?
植物達は、いろいろな不思議を持っていますね。
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ドリドリさん、お早うございます。
コメントありがとうございました。
やはり一年で発芽するのですか・・。
私は、二度同じような経験があったので、二年かかると思っておりました。
そして、検索したところ、NHKの趣味の園芸にも同じような事が書かれていました。
コメントを頂き、再検索して見ると次のような事が書かれていました。
ヤマシャクヤクの発芽は、種を蒔いたその年の秋に発根して、翌年3枚葉を展開する場合と、1年眠って翌年の秋に発根し蒔いてから2年後に3枚葉を出す場合の、2パターンがあります。
紅花ヤマシャクヤクなどは蒔いた2年後の発芽が主流になりやすく、普通の白花ヤマシャクヤクでは蒔いた翌年の発芽が主流となります。
これは採り蒔きした時の話で、完熟して乾燥しきった種はこの限りではありません。
詳しくは知りませんが、完熟させたり乾燥させると翌年発芽よりも2年後の発芽の方が多くなるようです。
私は、鞘が裂開して種子が零れ落ちる頃、種子を採取しています。
そのため、乾燥気味になり発芽抑制物質が形成されたのかもしれません。
今度は、鞘が開かない状態で試してみようと思います。
大変勉強になりました。
また教えてください。
投稿: やまぶどう | 2018年12月13日 (木) 04時44分
初めてメールいたします。近所の山で見たアキザキヤツシロランの検索で辿り着きました。
いつも、読み逃げで、楽しませていただいており、感謝しています。
福岡に住んでいますが、山芍薬は、完熟した種を取り撒きし(乾燥に弱いようです)、翌年春には発芽します。発芽に2年かかる事はありません。毎年この状態です。何故でしょうか?5年ほどで開花しています。参考になればと思いメールしました。
投稿: ドリドリ | 2018年12月12日 (水) 23時36分
ヤマシャク様、コメントありがとうございました。
前段に書いてくださった事は、この本にも書かれておりました。
私は無菌発芽をした事はありませんので、それには触れませんでした。
尚、この本には、「種子は完熟期間の約1/2で発芽能力を有する」と書かれていました。
私も、ヤマシャクヤクとベニバナヤマシャクヤクの種子を蒔き、前者は開花に至りましたが、後者はまだ未開花です。
ヤマシャクヤクを思い浮かべたのは、私の場合種を蒔いてから開花に至るまで、6~7年かかったのですが、別の人はそんなにかからないと言っていたからです。
NHK趣味の園芸でも、「発芽に2年、発芽してから開花に至るまで4~5年」とありました。
秋に種を蒔いて、翌々年の春に新芽を見ました(発芽を確認しました)。
標本用にプラケースに入れた種も、同様に2年後にケース内で発芽しました。
ところが、知人は1年で発芽したと自信を持って言っていたのです。
この本に書かれたように、発芽を抑制する物質が形成されるまでに採取して蒔けば、1年で発芽するのかと思った次第です。
また教えてください。
投稿: やまぶどう | 2018年12月12日 (水) 18時10分
種子の寿命に関する興味深いお話拝見しました。
ランに限って申せば未熟種子は無菌培養用です。これはご承知のように
未熟な種子の鞘は固くて雑菌の入る余地がありませんから果実の表皮
を薬品消毒だけで無菌箱で作業簡単でOKですね。ところが完熟種子は
鞘がゆるんでいて既に雑菌が入っている可能性がありコンタミでやられる
可能性が大であります。従ってランの無菌発芽には未熟種が一般的です。
一般植物の未熟種子が自然界で早く発芽するかは疑問です。林床には
無数の雑菌うようよですね、未熟のものはやられす。腐生ランなどは季節に
関係なく播くようですから、なおさらのこと完熟が要求されると思いますね。
何年か前ベニヤマシャクの完熟種庭に蒔きました今年初花をみました。
待てば叶いられますね、その種を完熟待って蒔きました。うれしいです。
投稿: ヤマシャク | 2018年12月12日 (水) 11時17分